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乳癌や食道癌で集学的治療をするとおもうのですが、集学的治療は早期から転移をし...

tkmrubytkmtkmさん

2017/9/1511:00:07

乳癌や食道癌で集学的治療をするとおもうのですが、集学的治療は早期から転移をしやすい癌にとくに行われるのですか?食道癌は予後が悪く、乳癌はいいというイメージなのですが、前者と後者では

集学的治療を行う意義は予後の面からは異なりますよね?臨床のセンスがないのでわかりません。教えてください。

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docterhawkさん

2017/9/1613:13:04

腫瘍内科医です。

昔は手術だけでがんを治せる、あるいは抗がん剤や放射線では
がんは治らないと思われていたので、すべてを治療に組み込ん
だ治療を「就学的治療」と呼び、いかにもすごいこうかがある
治療、あるいはなりふりかまわない治療、というニュアンスの
言葉として敷衍されたと思いますが。

現代のがん治療は効果があるのであれば放射線も、抗がん剤も
加える、だけど臨床試験で効果が証明されていないなら加えな
い、というevidence based medicineの考え方がベースになっ
ています。
なので、集学的治療=手術、放射線、抗がん剤をすべて使う、
という意味でなら、多くのがんにおいて集学的治療が標準治
療であり、もはや集学的治療を特に特別な治療として区別する
意味がない、という時代になっていると思います。

乳がんも食道がんも、手術に放射線、抗がん剤を加えたほうが
加えないより生存期間、無再発期間が長くなる、という臨床試
験の結果に基づいて行っているだけであり、「集学的治療が必
要」という結論ありきで行っている訳ではありません。臨床試
験の結果が出る以前は手術単独が標準治療だったわけです。

例えば上咽頭がんは遠隔転移をきたしやすいがんですが、解剖
学的に手術治療の対象となりえないので、放射線治療+化学療
法が標準治療です。以前は放射線単独治療が標準で、化学療法が
組み込まれるようになったのは2000年ころからです。

>集学的治療を行う意義

新たな治療法の開発の際、目標とすべき事項は概ね限られます。
遠隔転移なし、初回治療のがんは治癒させられる可能性がある
ので、生存期間(Overall Survival)がのびないと有効な治療
とは認められません。
再発・転移例は基本的には治癒させらないので、治療前よりも
がんが増悪するまでの期間(Progression-free survival, PFS)
の延長が目標となります。しかし、近年ではPFSの延長のみで
なくOSも伸びないと新規治療として認可されない傾向にあり
ます。
近年話題になっている免疫チェックポイント阻害薬であるオブ
ジーボ(ニボルマブ)、キートルーダ(ペンブロリズマブ)
などは、再発・転移非小細胞肺がんでPFS, OSを改善(延長)
したことが臨床試験で証明され、保険適用となっています。

ご指摘の通り、患者集団全体で比較したら、乳がんより食道
がんのほうが予後不良です。
ですが、いずれのがんもよりOSを伸ばすことを目標に開発が
進んできており、目指す方向性は同じです。

ただ、一般論として局所再発が多い場合は手術の切除範囲拡大
や放射線治療の追加、リンパ節や遠隔転移が多いがんには抗が
ん剤の追加で予後改善を図る、というのが基本的なセオリー
です。

食道がんは日本と欧米で疾患の種類が異なります。
日本は喫煙、アルコール多飲の方が扁平上皮癌を発症し、
欧米では逆流性食道炎をお持ちの方が腺癌を発症する、
という傾向があります。
ですが、いずれも遠隔転移なし、初回治療の場合は、浅い
腫瘍は内視鏡切除、ある程度以上の厚みがある場合は手術
または(化学)放射線療法が治療のベースです。
日本では術前化学療法+手術、欧米では術前化学放射線療
法+手術が標準とされています。化学療法単独治療は再発
・転移例のみで行われ、遠隔転移なし・初回治療例に行っ
てもOSは改善しません。

乳がんも基本は手術です。遠隔転移なし、初回治療の乳が
んに対し放射線治療が行われるのは、1) 比較的早期の乳が
んに対し乳房部分切除(縮小手術)を行った後、局所再発
を防ぐため全乳房照射を行う、2) 比較的進行したがんに
対し、乳房全摘+腋窩郭清を行った上で胸壁への浸潤、リ
ンパ節転移多数(4個以上が一般的)の場合に、局所再発
を防ぐ目的で放射線治療を追加する、のいずれかです。い
ずれも局所再発を防ぐことを目標としています。
乳がんに対する化学療法には2つの方法があります、
1)術前化学療法 と 2)術後化学療法 です。
どちらも手術±放射線治療よりOSを改善しますが、2)は
1)と生命予後は同等で、1)より乳房全摘術を回避出来る
可能性が高くなることが知られています。
化学療法を行うことで、局所再発および遠隔転移の両方に
効果が期待できるのですが、遠隔転移抑止は薬物療法にしか
期待できません。乳がんは比較的早期の段階で末梢血液中に
がん細胞が検出される(=遠隔転移が始まっている)ため、
これが遠隔臓器に定着し転移巣を形成しないようにするに
は、薬物を投与して血液中に薬効成分をいきわたらせるし
かないわけです。これは手術や放射線では期待できず、化
学療法にしか期待できない効果です。
ホルモン受容体陽性乳がんに対するホルモン療法も同様で、
目指すのは化学療法と同様に、遠隔転移の制御です。

ここまで書いて気付いたのですが、主様の質問の意図は、
放射線治療や化学療法によりより低侵襲な治療法を開発
する、という意味でしょうか。

たしかに多くの固形がんで標準治療とされる治療、特に
手術は身体に少なからぬダメージを耐えるため、より侵
襲が少ない治療を開発しようという試みは古くからあり
ます。
ただ、その場合もOSを低下させないことが必要条件にな
ります。新しい治療が承認されるには、患者さんを新旧
2グループにランダムに割り付けて治療成績を比較する
ランダム化比較試験が必要なため、手術とそれ以外の治
療の比較は倫理的に難しいところがあります。

食道がんは手術が標準治療でしたが、表在がんは内視鏡
切除が可能なので、これが標準治療として定着しつつあり
ます。食道がんの手術は治療合併症死が5%近くになるた
め、ランダム化比較試験を行わずとも明らかに生成良好
であれば標準治療として認めるには問題ない、むしろラ
ンダム化比較試験を行う方が非倫理的、と考えられてい
る、という背景があります。

化学放射線療法はまず切除不能な食道がんの治療として
開発されました。この際は放射線治療単独(RT)と化学
放射線治療(CRT)のランダム化比較試験が行われ、CR
T群のOSがより良好であったことから、CRTが標準治療
となりました。
切除可能な食道がんでも、RTよりCRTでより予後良好で
あることが明らかにされました。なので手術とCRTの両
者が選択肢となえますが、いずれがよりベターなのかは
明らかになっていません。欧米では手術=CRTという
ランダム化比較試験結果が出ていますが、日本は手術の
方法がより徹底しているため、欧米の結果をそのまま
適用できない、との判断で手術 vs CRTのランダム化比
較試験が継続中です。
もし、この試験の結果手術≦CRTとなれば、手術は基本
的に治療の選択肢から消えていくでしょう。手術>CRT
の場合は、手術の方が成績良好であることを説明したう
えで、患者さんが手術回避を希望したらCRTを行うこと
になるでしょう。現在は両者の優劣がはっきりしていな
いため、医師と患者の話し合いで決めていると思います。

乳がんの場合は乳房温存療法が低侵襲治療開発の一環
として乳房温存療法が開発されました。乳房温存療法は
日本で開発が進んだ治療で、ポイントは乳房の切除範囲
縮小、センチネルリンパ節生検による術中判定と結果に
応じた腋窩リンパ節郭清の省略、術後全乳房照射による
局所再発の抑制、です。これはランダム化比較試験が
行われ、乳房温存療法群が標準治療と同等の予後であっ
た、という結果が示されています。この治療には放射線
療法が貢献しているといえます。

また、術前化学療法も乳房全摘を回避する効果があると
されているので、化学療法が低侵襲治療に貢献している
といえるでしょう。

治療開発は大きく2つに大別されます。

①は標準治療で十分な生命予後が得られていない場合などに
より侵襲が高い新規治療(抗がん剤の追加など)により主に
生命予後の改善を期待する場合です。この場合、治療に伴う
有害事象も増えますので、新規治療として認可されるには
まず予後が標準治療より改善していること(OSの延長など)
が必須条件になります。統計学的には「優越性」が証明される
必要があり、「試験治療が標準治療より優越であることを証
明する」ことを目標としたランダム化比較試験は「優越性試
験」と呼びます。
食道がんに対するCRTは優越性試験によりRTに対する優越性
を証明されています。

②は標準治療で一定の予後が得られているが、有害事象が多
く、より低侵襲な新規治療(切除範囲の縮小、化学療法の種
類変更など)に生命予後以外の改善(手術合併症の回避、臓
器温存、入院期間の短縮など)を期待する場合です。この場
合、OSが標準治療より上回っている必要はないですが、劣る
ようでは困ります。統計学的には「明らかに劣っているとは
言えない」レベルを満たすことを「非劣性」とよび、「試験
治療が標準治療に対し非劣性であることを証明する」ことを
目指す非劣勢のランダム化比較試験は「非劣性試験」と呼び
ます。試験治療が標準治療に対し非劣性で、かつ試験治療が
患者にとってのメリットを伴う治療であれば、それを「標準
治療と同等の治療」とみなすことができます。
乳房温存術式(乳房部分切除+センチネルリンパ節生検±
腋窩郭清)+術後全乳房照射は、乳房全摘+腋窩郭清に対し
非劣性であることが証明された治療です。

以上をまとめますと、

・新規治療には、標準治療に対し優越性を求められる場合
(より侵襲が大きい治療)と非劣性でよい場合(より低侵襲
な場合)がある。
・新規治療開発の指標は基本的に生命予後(OS)
・予後不良な疾患はOS改善を目指し、より高侵襲な試験治療
の優越性を証明する試験を行う。
・一定の治療成績が得られている疾患は、生命予後以外の改善
を図るためにより低侵襲な治療の非劣性を証明する試験を行う。

となります。

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