オイルの良否は値段ではなく、そのオイルが良いか悪いかなのです。
しかも、純正オイルが良いとは限りません。
最近、エンジンオイルの勉強会に行ってきました。
エンジンオイルは早めに交換するのがエンジンのために良い・・・と言うのは昔の考えで、現在はエンジンオイルの早期交換によるエンジンのダメージが問題になっています。
ガソリン・軽油・灯油・オイルなどの各種石油製品は、同じ原油から作られています。原油は、製油所の加熱炉で約350℃に加熱され、石油蒸気になって蒸留塔に送られます。蒸留塔は上に行くほど温度が低くなるように制御されており、入ってきた石油蒸気を沸点の低いものから順に分けています。沸点30℃~180℃でガソリンなどが、170℃~250℃で灯油、240℃~350℃で軽油が留出され、蒸留塔に残ったものがオイルや重油やアスファルトになります。
新しいオイルがエンジンに入れられると、エンジンの熱によって石油蒸発が起こります。石油蒸発はカーボンスラッジとなってスロットルボディーやEGR、DPFなどに悪影響を与え、故障の原因となります。
ある程度の石油蒸発が終了してオイルが安定したころに交換してしまうと、再び新油による石油蒸発が繰り返され・・・
データーでは、エンジンオイルは3000km走行あたりから蒸発が止まって安定します。
車のためには、蒸発率の低いエンジンオイルが良く、メーカー純正オイルでは14~28%と開きがあります。
目安は7%以下の蒸発率の低いエンジンオイルが車のためには良いです。
オイルは酸化するので交換が必要・・・と言いますが、
オイルは酸素を結合して酸化するのではありません。
オイルに燃焼したカーボンが溶け込むと酸性になるのです。その酸化を防ぐためにオイルには塩基剤は入っています。
塩基剤の残存量を塩基価で表しますが、(オイル1gを中和させるのに 必要なKOH(水酸化カリウム)のmg)
塩基価が0やマイナスになれば「オイルが酸化」と言うことです。
通常の純正エンジンオイルは塩基価は7程度ですが、粗悪な安いオイルは3~4、
品質の高いオイルは10以上あります。
エンジンオイルの本当の寿命は、その塩基価なのです。
塩基価が2~3の時にエンジンオイルを交換するのが安全ですので、その時期は使っているオイルの塩基価によります。
今の外車のロングライフエンジンオイルは塩基価を非常に高くしているのです。
エンジンオイルの寿命には、もう2つの問題があります。
それは「ケイ素」と「塩分」です。
ケイ素とはガラス成分のことで、道路の粉じんの中には必ず入っており、
マイクロダストなのでエアークリーナやペーパー式オイルフィルタではろ過できません。これがエアークリーナーからエンジン内部に吸われ、エンジンオイルに洗浄されて混入します。エンジンオイルに混入したケイ素が研磨剤となってピストンやシリンダーを摩耗させるのです。
ケイ素は都市部に多く、パトカーやタクシーなどの都市部で多く走行する車では7000km~でエンジンの摩耗が進み、郊外からの通勤車では2万km~で摩耗が進み始めます。
これはオイルフィルターのろ過性能にも影響し、成形型勾配フィルタ(トヨタ採用)を使っていればエンジンオイルの寿命は長く、ろ紙面積の狭くて粗いオイルフィルターではエンジンオイルの品質は低くなります。
もう一つの塩分は、海に使い場所での車の使用です。
吸入空気に塩分(NaCl)が混じり、水分(H2O)と反応して塩酸(HCl)になり、オイルにも溶け込んでエンジンを腐食させます。
海沿いで使う車では、5000kmとは言わず、エンジンオイルの早期交換が必要です。(蒸発性の低いオイルがベスト)
と言うことで、エンジンオイルの交換時期は一律ではなく、使うオイル、使用する環境などで異なります。
ちなみに、車のエンジンオイルの交換時期はメーカーが決めたものではありません。
エンジンの種類や性質、車の性能が違っても一律なのはおかしいと思いませんか?
経済産業省の審議会で石油資源を守るために昔々(私が自動車業界に入ったころ)に決められた数字で、
当時は3000kmでの交換が常識でした。