「二重敬語」とは、一つの語に同じ種類の敬語を二重に使ったもの(『敬語の指針』より)。
敬体の文型で、文末に「です」と「ます」を続ける形を「二重敬語」と呼ぶ人もいますが、一般に「二重敬語」とは形が違いますので、「敬体の積み重ね」「過剰敬語」と呼んだほうがわかりやすいでしょう。
文末に「です」または「ます」を用いて、ていねいな表現で統一された文章のスタイル(文系)を「敬体」と言います。
敬体:文末に「です」または「ます」を用いて、ていねいな表現で統一された文の形式。また、その文体。(日本国語大辞典)
常体:口語文体の一。敬語を用いず、文末に「だ」「である」などを用いる普通の文章様式。(大辞林 第三版)
ご質問の文例
「~ますでしょうか」
は、「ます」「です」という敬体を二重に重ねたものです。
「です」や「ます」は、ふつう「丁寧語」の一部とされ、その意味で「敬語」に含まれます。
二重敬語でも、「お召し上がりになる」「お伺いする」などのように、慣習として定着し問題ないものもありますが、同様に敬体の積み重ねでも下記の例のように、そのほうがいい場合や、①、②のような形のような自然な表現の場合もあります。
ご質問の文例は、下記の①の「推量の場合」ですので、こちらのほうがよく使われる形です。
過剰敬語のほうがよい場合もあります。
Ⓐ相手のご家族が事故にあったときなど
「さぞかし大変“でした”“でしょう”」
Ⓑ葬儀などで
「小さいお子さんがいらっしゃるので、これから、お辛いこともござい“ます”“でしょう”」
ⓒラッシュ時にいらしたお客様に
「道が混み“ました”“でしょう”」
これらは、二重敬体ですが、推量の場合は普通に使わていて、そのほうがいい場合もあります。
<福田健『もう間違わない敬語の本』KKロングセラーズより>
【ご参考】
①「ます・ません・ました+でしょう」(推量の場合)→〇
......〇「雨で、外へ出られませんでしょう」・・・・・・・〇「出られないでしょう」
......〇「道がさぞ混みましたでしょう」・・・・・・・・・・・〇「混んだでしょう」
......〇「お苦しい場合もございますでしょうね」・・・・〇「あるでしょうね」
②「ません+でした」(否定形+過去形)→〇
......〇「あまり安くはありませんでした」
.................×「安くないでした」、△「安くなかったです」
......〇「探してみましたが見つかりませんでした」
.................×「見つからないでした」、△「見つからなかったです」
③「ます・ません・ました+です」→×
......×「食事はもう済ませましたです」
......×「私の会社のは職務給制度がありませんです」
......×「それには厄介な事情もございますです」
....(否定形の場合)
......△「ご注文はございませんですか」
④「ます・ました+でした」→×
......×「面白い本がありましたです」
≪水谷公弥『敬語に強くなる本-人前で恥をかかないために』エール出版社、1975年、P150-152を参考に作成≫
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「敬語の指針」(文化審議会答申)
P29
一つの語について、同じ種類の敬語を二重に使ったものを「二重敬語」という。例えば、「お読みになられる」は、「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で、更に尊敬語の「……れる」を加えたもので、二重敬語である。
「二重敬語」は,一般に適切ではないとされている。ただし,語によっては,習慣として定着しているものもある。
【習慣として定着している二重敬語の例】
・(尊敬語) お召し上がりになる,お見えになる
・(謙譲語Ⅰ)お伺いする,お伺いいたす,お伺い申し上げる
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