実は、支線とか、いわゆる車庫の構内などの場合は、運転士の方から進路を要求して、コンピューター制御の機械装置がポイント(分岐器)を動かして進路構成するものがあるのです。
そしてポイントの切換が完了すると、信号機に付属した「進路表示器」に、線路がどこに切り替っているかが表示されます。
これを運転士が確認して、正しい進路に切換わっていれば、あとは信号に従って進んでゆくことになるのです。
また、運転士が進路をリクエストする場合にしろ、信号係などの、他の係員がポイントを切換える場合にしろ、運転士はあらかじめ指定された方向と違う方向にポイントが切換わっていた場合は、運転士は必ず信号機の手前で停止して、正しい進路構成を要求しなければなりません。
つまり運転士は、ただ闇雲にポイントが切換わっている方向に進んではいけないのです。
しかし先日の京成高砂の事故の場合は、運転士がこの進路確認を怠り、誤った進路に入れてしまったのが事故の前段でした。
なおポイントは、そのセクション(区間)に車両が居るときは、決して転換できないように出来ています。
また、ポイントが動いている時間は、関係する信号は全部「赤」で、どの方向からも車両が入ってはならないことになります。
しかし、特にポイントの切換がコンピューターで制御された方式の場合、電車が通り過ぎると、次のリクエストのために、直ぐにポイントが切換わるわけです。
とは言っても、ポイントが切換わるときは、モーターが何十回転もして、
解錠→トングレール*の方向の切換え→鎖錠
という一連の動作のため、数秒かかります。
そして、先日の京成高砂の事故の場合は、運転士が規則を無視して独断ですぐに車両をバックさせたため、ちょうどポイント切換のモーションの最中に車両がバックで戻って来てしまったのです。
このタイミングが悪いとポイントは鎖錠が不可で、切換が完了するまで動いてしまいます。
そのため、後ろの台車は右側に、前の台車は左側にと、別々の線路を進んでしまって脱線してしまったのです。(元運転士)