*劇中レヴュー場面には灰田勝彦、笠置シヅ子、岸井明、益田隆、荻野幸久、あきれたぼういず、灰田晴彦とニュー・モアナ、後藤博とデキシー・ランダースなどのほか日劇ダンシング・チーム250名が出演する。きらめく東京の不夜城日劇では今けんらんとレヴューが展開している。ライン・ダンサーの瞳、マリ、由紀、光子は何れもソロ・ダンスの抜擢候補だったが、瞳はライン・ダンスに集団芸術の尊さを感じて演出助手笠原の奬める意見に反対であった。
*木の間をとおして聚楽第の、宏壮な主殿が見えていたが、今夜も酒宴と思われて、陽気な声が聞こえてくる。間毎々々に点もされた燈が、不夜城のようにも明るく見える。「どうしたのだろう、遅いではないか」 縁に腰をかけた大兵の武士は、誰かを待ってでもいると見えて、ふとこう口に出して呟いた。
*世の中にこんな明るい夜が実際にあるものだろうかとおもった。数年を経て不夜城と言う言葉を覚えたが、その時も上野駅にはじめて著いたときの印象を逆におもい出したものであった。そのころの燈火は電燈よりも石油の洋燈が多かったはずだのにそんなに明るく感じたものである。
*一部の店には「冰室」時代の内装や屋号を今も残している店もある。一方で不夜城とも言われる香港のライフスタイルに合わせて24時間営業にし、新しいメニューを広げている店もある。地価や家賃の高い香港では、回転率を上げた経営をしないと生き残れず、人件費をかけても長時間営業する方が利益に貢献できるという考えもある。
*光はうねったり凝縮し、東京の夜を銀河状に圧迫する。手前の不夜城は渋谷の繁華街で、その向こうに新都心のビル照明が林立する。首都高速はオレンジ色の河となって樹海をつらぬき、光は白く青く赤く、途方もない密度で夜景を装飾する。