改憲案が決まっていないのに、どうしてそういう質問が成り立つのでしょうか?
リアリストの国民なら当然「思いません」と答えるでしょう。
中身のわからないものに賛成するくらいなら、今の憲法の方がマシだということで。
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そもそも自民党は本気で改憲する気などありません。
だから、今のように改憲派が自民党を熱烈支持し続けている間は、自民党は改憲案の発議すらしないでしょう。
そして改憲派は、改憲する気がない自民党の選挙活動にただ加担して選挙に勝って、それで自己満足しているだけなのです。
何しろ現状で改憲をしたくない最も強い動機を持っているのが自民党であり、自民党にとって改憲は選挙に勝つためのネタにすぎないのですから。
日本の改憲手続きにおいて、憲法審査会の審議にかけるには、国会に衆院100人以上、参院50人以上の賛同を得た改憲原案を提示しなければならないのに、改憲派を自称する自民党などの政党は、いまだかつてこの改憲原案を提示したことは一度もないし、そのための改憲派内での意見集約を行う素振りすら見せていません。
安倍元首相も、衆参両院であれだけ議席を確保していたのに、結局、憲法審査会を開いたところでそこに改憲原案に提示するわけでもなく、国民投票の制度を弄って、改憲やってます感の演出をしていただけでした。
彼らは改憲念仏を唱えることで票を集めているのであり、本当に改憲してしまったら、この楽に票を集められる手段が使えなくなる。しかもその過程で改憲派が分裂するのは不可避。
そんな自分たちが不利になることはしたくないのです。
改憲派は、護憲派が改憲の議論を邪魔しているとか言いふらしてますが、改憲の中身の議論を国会で行うことから逃げ続けているのは改憲派の方です。
改憲派が改憲の中身を提示していないのに、何をどう議論できるというのでしょう。
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日本の改憲手続きは具体的な改憲案に対して賛否を問うものなので、本来、改憲したいのであれば改憲を主張する立場の者が、統一された改憲案提示して、どういう目的で、どういう効果を狙っているのかを、客観的かつ論理的に説明しなければならないのですが、今の日本の改憲派は一切その気がないようで、改憲派内での意見集約さえしようとしない。上記のように、自民党内ですらかつて発表した改憲草案と安倍元総裁では全く違うことを言っているのに、安倍元総裁を党紀違反で処分するわけでもなく、さりとて改憲草案を公式に放棄するわけでもなく、放置したまま。
なぜそんな状態かと言えば、今の改憲派はアンチ日本国憲法で一致しているだけで、改憲の中身についての意見は実はバラバラ、下手に意見集約なんてやろうとしたら、「それは自分の考えた改憲とは違う」という者が必ず現れて改憲派が空中分解してしまう可能性が高いから、改憲派内で改憲案を統一しようとしないのです。
この状態で改憲に賛成するということは、改憲さえされれば中身はどうでもいいと考えていることになり、それでは「改憲原理主義」という宗教であり、そのような非論理的な感情任せのような改憲は、立憲主義の民主主義国家においては断じてなされるべきではないものです。
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結局改憲派は、積極的にか騙されているのか知りませんが、自民党を選挙で勝たせるための政治活動をやっているだけ。
今の宙ぶらりんの状態を続ければ、内政や外交で何の成果をあげなくても、改憲派を自認する人々が自民党に投票してくれるので選挙では大負けしない、自民党にとってこんな楽なことはない。
つまり、今の自民党にとって改憲は自分たちが政治権力を握り続けるためのネタなのであり、自民党はこの状態をできるだけ長く続けたいのです。
改憲したい人が、改憲をしたくない政党を選挙で勝たせるために、「改憲、改憲」と連呼して一生懸命政治活動を行っている、それが今の日本の「改憲」の実態です。