“控”には中国語の用法で「告げる」意味があります。つまり、「控訴」とは同じ意味の単語を二つ重ねて生じた熟語です。「控訴」は中国語では古くは「訴える」意味で、更に意味が限定化した「役人や役所に訴える」意味でも用いられました。 「遠慮する」意味の「控える」での“控”の用法は、日本語で二次的に生じたもので、日本語内でのものです。“控”には中国語で「(手綱を引いて)馬を止める」意味があります。これを和語で「ひかえる」と言い、その和語を当てたのです。然し、この日本語の「ひかえる」という単語の意味が、「遠慮する」や「待機する」など、中国語の「控」には無い意味まで派生してしまったため、この様な乖離が生じてしまってます(私は日本語の歴史的推移は詳しく有りませんので、「ひかえる」という語の語義変化の詳しい事情は分かりかねます。正確なことは小学館《日本国語大辞典》などで確認をお勧めします)。 つまり、「遠慮する」意味で“控”という漢字を用いるのは中国語としては間違っており(日本語内での用法)、一方「控訴」という熟語は中国語の用法に基づいているので、齟齬が生じているということです。この様な例は結構あります。