1, 母方の家が華族であることを示します。 要は、あの家は家ではなく「城」です。 日本の城は政務や武具の保管庫、或いは外交の場であり、いわば公共設備です。 誰かが公務で訪れれば正門から入るが、家族は敷地内の別棟に住むのが普通でした。 そうした別邸はハイカラな洋館であることを明治大正の華族が好んだ。 一言で言えば、彼らも古臭く管理が大変な本館には住みたくなかったんですよ。 2,墓の主はなんだったのでしょう。 ここは難解で、他のシーンで随所に日本神話のモチーフが多用されることから、単純に考えればイザナミです。 が、ここはおそらく、製作側の都合でシナリオが二転三転した際、本来ならば編集でカットする部分だったものが意味がないシーンとして残ってしまった、というのが実情ではないかと。 今回、監督は大きなシーンカットをあえて行わなかったそうなので。 宮崎監督作品には、そうした膨大な「使われなかったシーン」がこれまでの作品にも存在してることがわかっています。 3, あのお婆さんたちも、本来はキリコさんのように「あちらの世界」にいけば大きな役割を持つ重要人物たちばかりなのでしょう それは今回語られなかったというだけで、彼女たちは無意識下で地下の世界のことを理解しているのではないでしょうか。 4, 鳥葬のモチーフを映像化したのだと思います。 かつて、中央アジアでは人が死ぬと鳥に体を食わせて天に返すという風習があり、チベットなどでは近年まで行われていました。 5, インコの存在自体が難解なので確定的には言えませんが、王の「裏切りだ」というセリフがキーなのでしょう。 石の中はインコで一杯だ、というセリフがありましたよね。 一方で大叔父の「石はまだ不完全」というセリフもありました。 石とは大地そのもの、つまり本来は地球そのものを表していて、その中は「死」で埋まっていると。わらわらが飛べなくなるぐらい、世界は死に支配されている状態だったわけです。 そこに真人が現れて、石（世界）を安定化させることができる状態となった。 しかし、世界が安定すれば死も安定し、インコの役割は大幅に縮小されるわけです。 これは、現在のウクライナなど世界的に不安定になりつつある現世界を風刺してる描写であり、インコ、つまり死をもたらすもの＝軍人はこの世界から淘汰されてしまうことへの反発だったのではないか。 王としては自らこそが武力で世界の秩序を守ると自負していただけに、そんな石ころに託されるということが我慢できなかったのでは。 ただ、宮崎監督自身は明らかなる反戦作家ではなく、むしろ過去作を見ると戦争に憧憬を抱いているように感じることすらあり、彼自身の感情的には、軍人への敬意と存在意義を持っているように思います。 だからこそ、最後に大王のインコはちゃんと現世で生を得た。 死も軍隊も、現世においては世界に内包された一つの要素でしかない、という広い視野なのでしょう。