語源は buffer で、訳すと「緩衝域」です。 緩衝というのは、文字通り、衝撃を緩める事です。たとえば化学の分野では、酸性の物質が入ったり、アルカリ性の物質が入ったりしても、pH をある程度保つように調整された液体を、緩衝液などと呼びます（ちなみに生きている血液も緩衝液です）。 プログラミングにおける緩衝とは、多くの場合、処理速度の差を埋めるものです。 たとえば、２つの機器を通信回線で結んで、大量の文字を転送する、というシステムを考えます。１文字ずつ１文字ずつ転送していくのと、１０００文字分まとめて転送するのとでは、後者の方が速く処理完了します。 ところが、受け取る側は、１文字でも１０００文字でも受け取れるのに、送り出す側は、どうしても１文字ずつしか送り出せない、という場合があります。この場合、送り出す側に合わせて、受け取る側も１文字ずつ受け取っていたら、受け取る側の速度も落ちてしまい、システム全体の速度が落ちてしまいます。 こんな場合、両者の間に、文字を溜め込める領域を用意してやると、受け取り側は、速く動作する事が出来て、システム全体の速度が上がります。 この、「溜め込める領域」が buffer です。 また、あえて溜め込む動作を、buffering と呼びます。 buffer は、何かと何かの中間に置かれるので、一時的な置き場とも言えます。そうした意味から、一時的にしか使われない、重要性の低い変数の名前に、buf と付けてしまう事は、ありがちです。 しかし、buffer は、きちんと使えば性能を上げられる重要なテクニックです。いいかげんな命名には使わない方が賢明です。一時的に使うだけなら、temporary とか temp とか tmp とか、もしくは working とかの、「一時的なものですよ」という事を示す名前を付けるべきです。 －補足－ ご提示のページを拝見致しましたが、私が見た限りでは、変数名 buf は、単なる「データの一時的な置き場所」として命名されていて、buffering するための場所という意味では命名されていないと見受けられました。 buffer というのは、ある場所と、別の場所との間の緩衝域ですので、buf という変数名ならば、「何かと何かの中間において、データを受け渡すための領域」、として使うべきです。 つまり、変数名の付け方に関して言えば、あまり良くないと思うのですが、しかし、慣習的に、buf という変数名は、かなり多くのところで見られます。 何のためにわざわざ buffer を設けるのか、その理由の多くは、上記で書いたように、２ポイント間を緩衝する事によって全体の性能（処理速度）を上げる、という事です（上記で私が書いた、「１文字と１０００文字」の話を、ゆっくり読んでみてください）。 buffer を複数回使いまわせば、それはキャッシュ（cache）と呼ばれます。 buffer を複数のポイントで共用すれば、それはプロキシ（proxy）と呼ばれます。 cache も proxy も、共に、システム全体の性能（処理速度）を上げるためのテクニックです。