哲学とは、まさに「思考」ですから、哲学上の実験は、基本的にすべてが思考実験です。
だから、「証明」と言えるかどうかは別として、哲学の「何らかの答え」は、まさに「思考実験」から、導き出されるものです。
大昔、「科学(自然科学)」と「哲学」は分けられていませんでした。
同じものだったのです。
でも、今は分けられていますよね?
つまり、現代では「科学」と「哲学」は別の領域を指します。
思考上ではない、つまり、「実際に行う実験」で導き出されるのは「科学的な答え」です。
量子論にしても、実際に実験したデータで何かを証明するのなら、それは「科学的な行為」です。
それに対して、その問題を思考上で取り扱えば、それこそが「哲学的な行為」と言えます。
なお、「シュレディンガーの猫」は、シュレディンガー方程式の正当性を説明するための思考実験ではありません。
「シュレディンガーの猫」というのは、
シュレディンガー方程式などを編み出し、量子論に大きく貢献したシュレディンガーが、途中で量子論に嫌気がさし(心情的に量子論が納得できなくなり)、
「量子論なんて間違いだよ!だってさあ・・・」
という文脈で提起した思考実験です。
つまり、シュレディンガーの意図は「量子論の否定」だったのですが、
皮肉なことに、この思考実験は結果的に量子論の発展にまたもや大きく貢献し、「コペンハーゲン解釈」「多世界解釈」などが生まれるきっかけとなりました。