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『無邪気な悪魔たち』前半

kai********さん

2018/8/1913:42:42

『無邪気な悪魔たち』前半

どうですか?

経営していた工場が破産して父は失踪し、やつれた母は病院のベッドの上で死んだ。意外にも、安らかな死顔だった。死が母を、苦しみから解放してくれたのだ。死は、苦悩する全ての人を塵に還してくれる。死はそんなに悪い奴じゃないと思う。
最近、近所の保育園から「死の歌」が聞こえてくる。
「とおりゃんせ とおりゃんせ ここはどこの
ほそみちじゃ…」と。
園児たちに「死」を教えるのは良いことだと思う。園児たちは「死」から、多くのことを学ぶことができるのだから。

工場の二階にある小部屋は、以前は事務室だったが、今は機械や金属部品の物置になっている。
僕はそこにピアノを移動し、聖也はそこをアトリエにした。僕がベートーヴェンを練習する傍らで、聖也が油絵を描く毎日だ。聖也はそのどぎつい原色の絵画を、ゴッホやルノアールをも凌駕すると豪語していた。

僕たちは、そこである「道具」を製作した。僕にとってそれは「死のメロディー」を奏でる「楽器」であり、聖也にとっては惨劇を描く「画筆」だった。
金属部品が散乱する作業台には、カスタムAKやS &Wの模造品が並んでいる。僕がそれらの作品を見つめていたら、聖也が隣に立っていた。彼はいつもドアをノックすることもなく突然姿を現わすのだ。
彼と気が合う理由がわからない。僕らの性格は正反対だ。僕は真面目な性格なのに、彼は悪戯好きのお調子者だ。共通点は二人ともクラスの厄介者だということぐらいだ。
聖也は「道具」を撫でながら「なんて綺麗なんだ。明日が楽しみだぜ!」と言った。
リボルバー のシリンダーは滑らかに回転し、その金属音に、僕らは魅了された。時間はかかったが「道具」は遂に完成したのだ。僕は明日の学園祭で「死のメロディー」を奏でるつもりだ。

今日はクラスメイトが明日の準備をしているが、僕は担任に欠席すると連絡をした。
「今日はやることがあるので欠席します」
「なんだそれ?」
「明日の準備です」
「なら学校でみんなと一緒にしなさい」
「家で準備します」
「何を言ってるんだ?」
「すみません。明日はっきり説明します」

計画は簡単だ。学園祭の真っ最中に発煙筒をばらまき、非常ベルのボタンを押しまくる。それから僕らの祭典を楽しむのだ。

僕は聖也に言った。
「声明文を書いておこう。勝手に理由をつけられたくないだろ」
「理由がいるのか?こりゃ必然だろ」
「真面目に考えろよ」
「わかったわかった!面倒くさい野郎だな。俺が書いてやるよ」
「何て?」
「俺たちは正義の味方!悪人どもを成敗してやる!ってな」
そう言うと彼は大笑いし、僕は声明文を諦めた。確かに面倒と言えば面倒だし。

翌日の正午、僕らは父の車で学校に向った。しかし聖也と口論が始まった。車中で聴くBGMについてだ。それは僕らにとって重要な問題だった。何故なら、それは「祭典」の前奏曲であり、その旋律は「祭典」を彩るBGMにもなるのだから。僕は厳粛なものにしたかったからベートーヴェンを主張したのに、聖也は納得しなかった。彼は破茶滅茶の狂酔乱舞がしたかったのだ。
彼は僕に言った。
「そんな暗い曲を聴いてられるか!あれがいいよ、あれ!アメリカ海軍の歌!」
「『錨を上げて』のこと?」
「そうそう!それそれ!」
「ふざけるなよ」
結局彼の意見に従った。助手席の彼は、歌に合わせてドアを手で叩き、御機嫌だった。
「あいつらの髪の毛を、黒板に張りつけてやろうぜ!」

駐車場から校舎に向かう途中、クラスでいつもいじめられている男子に出くわした。彼は華奢で少女のような顔をしていた。セーラー服を着せたら、誰も男子と思わないだろう。つまり、いじめには打ってつけの存在ということだ。
ある日、僕が体育倉庫のマットの上で寝ていると彼が入ってきて「そばにいてもいい?」と言った。彼の目の周りは赤黒く腫れ上がり唇が切れていた。「構わないけど。どうしたのその顔?」と尋ねると、彼は「別になんでもない。ねえ隣で寝てもいい?」と言った。彼をそっと抱いてあげると、僕の腕の中で震えながら泣いていた。
その彼が校舎の片隅にいたのだ。僕が「君が心配だから帰ってくれないかな」と言うと、彼は素直に帰ってくれた。僕は聖也に「これで心置きなく楽しめそうだ」と言った。

校舎に入ると、役柄に応じ扮装したクラスの女子たちが発声練習をしていた。彼女たちは「なにその格好?馬鹿じゃない」と僕らを笑った。僕らはナチス親衛隊の格好を真似していたのだ。僕は彼女たちに「これ本物なんだよ」と言い「道具」を見せてあげた。すると彼女たちは「きもーい!」と言い、笑った。彼女たちに「もうすぐ始まるけど心の準備は出来ているの?」と尋ねると、またけらけらと笑った。彼女たちが、儚く散ってしまう花に思えた。僕は彼女たちのために、あの歌を口ずさんだ。
「いきはよいよい かえりはこわい こわいながらも とおりゃんせ とおりゃんせ…」

(続く)

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clo********さん

2018/8/3022:37:42

わかんない

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