石炭も可採埋蔵という意味では実際には偏在している。石油も石炭も大規模な鉱脈の採掘ほど採算性がよいからだ。
だが採算性はないから永久に採掘されないような小規模な鉱脈なら世界中至る所にある。それはすべて太古の昔からの動植物の死骸が降り積もったものだ。
例えば石油は大規模油田の場所が偏在しているが、それは主に2億年ほど前に赤道付近にあった巨大で細長い海に、当時の温暖な気候で大繁殖した動植物の死骸が大量に埋もれたからだ。
その場所はプレート運動によって地盤がゆがみ、変性して絞り出された軽い石油が上昇して大規模に集積しやすい地質構造が出来た。
またその場所以外でも埋もれたものが世界中至る所にあり、それが泥岩の中の油母となっている。泥岩はどこにでも見られる堆積岩なので、もともと生物死骸由来の有機分を多く含んでいる。
その中でも有機分が多く、変成作用を受けて油母化したものが、シェールオイルやサンドオイルと呼ばれている。
それは油田として集積する地盤構造にならなかったが、油母を含む泥岩層として小から大まで世界中至る所にあり、日本にもある。
なのでもちろん採掘して採算が取れるようなものは限られる。もっとも採算性がよいので採掘が実現したのがアメリカのシェール層だ。他にも細々とながらサンドオイルなども採掘されているところもある。
さらに言えば、生物死骸は今でも常時、海底や湖沼底に溜まって行ってるから、石油(油母)になる変成作用はずっと続いている。その意味では世界中で普遍的に存在する。
石炭は陸上の湖沼底や河川底に植物死骸が埋もれたものだ。
その過程はよく知られており、今でもそこらじゅうで埋もれ木などが褐炭化しているのを見つけることが出来る。日本では褐炭(亜炭とも呼ばれる)の層が平野部の至る所で見つけられる。
その変成作用は脱酸素反応などで植物から炭素以外の成分が次第に抜けていく過程だ。水底などの無酸素状態で起こりやすい。
熱帯雨林では大量の植物死骸が積み重なって無酸素状態になった分厚い褐炭層が出来ていて、インドネシアなどで有名な大火事の元になっている。
現代で大量に採掘される質の良い石炭(瀝青炭など)は、主に太古の石炭紀に大量繁殖した植物由来だ。その時代には植物を分解する細菌類が誕生していなかったため、石炭として残りやすかった。もちろん大繁殖するには土地や気候条件というものがあるから、今大量採掘できる場所は太古に大繁殖した地域だということになる。
また、石炭は固体だから、地盤が褶曲などの変動を受けても、石油のように移動して油田のように大量に一か所に集まるということはない。
なので炭田は、地層に挟まれたそう厚くはない層として存在し、採掘は石炭層に沿って掘り進む形となる。その中でも石炭紀の地層が最もぶ厚く、採掘しやすいわけだ。
褐炭の方はより多く、世界中至る所に薄く広く分布している。