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歌舞伎はもともと、安土桃山時代に女性である出雲阿国(いずもの おくに)が男装をして歌や舞を披露して人気を博したことから始まります。 その後、女性が芸だけでなく春を売ったことから、風紀の乱れを理由に途絶えました。 その後、元服前の若い男性による『若衆歌舞伎(わかしゅかぶき)』が生まれますが、こちらも少年たちによる性的接待が横行したため、途絶えます。 その後、男性のみの演者による現在の歌舞伎が発達し、女形(おやま、とも)が女性を演じるようになりました。 いっぽう、宝塚歌劇団。 大正初期に阪急電鉄の創始者、小林一三(こばやし いちぞう)により宝塚唱歌隊が作られ、女性のみのレビューを演じる劇団として出発しました。 100年余の歴史の中では二度ほど男性劇団員の登用案も出ましたが、いずれも劇団内部やファンの根強い反対に遭い、根付くには至りませんでした。 …と、ここまでが質問者さんの挙げられた歌舞伎や宝塚歌劇団の沿革です。 * * * * * * * 芸能の世界では男性が女性を、あるいは女性が男性を演じることは少なくありません。 平安時代末期、白拍子(しらびょうし)と呼ばれた女性たちがいました。 これは女性が男装して歌や舞を披露し、時に枕を交わす等のサービスをしたもの。 歴史的には、源義経(みなもとの よしつね)の愛人であった静御前(しずかごぜん)が有名です。 これらが人気を博し、当時の民衆に熱狂的に愛されたのには、いくつか理由があるかと思います。 *男性が女性を、女性が男性を演じることで、ユニセックスで中世的な魅力が生まれる。 *男性演者が、男性の理想とする女性を演じ、女性演者が女性の理想の男性像を描くことで、理想のヒーローやヒロインが生まれる。 男女の競演がない、という障壁が、却って異性を演じるための高度なノウハウを培わせ、今や歌舞伎や宝塚歌劇のほかにない武器となっているように思います。 * * * * * * * * 蛇足ながら、長らく男性のみの世界であった芸界にも、女性の演者が増えてきています。 能の世界も男性のみの世界。戦後になって津村紀三子(つむら きみこ)らが風穴を開け、現在では何人もの女性能楽師が活躍されています。 狂言も600年近く男性のみの世界でしたが、最近泉淳子(いずみ じゅんこ)さん10世三宅藤九郎(みやけ とうくろう)さんの姉妹が活躍されています。 落語も、上方落語の露の都(つゆの みやこ)師がパイオニアとして女流の道を切り拓き、最近は女性噺家が増えています。 講談は、今や女性講談師が百花繚乱ですね。 我々楽しむ観客側としては、男性であれ女性であれ、良質なエンターテインメントを味わえる喜びを享受できることに感謝です。 長文、失礼しました。
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