なぜかけるのか,という疑問なら実際にかき方が存在することをみればよいが,ガロア理論の基本定理から導かれる次の美しい定理は証明を含めて知っておくべきである.
【定理】
素数pについて,正p角形が作図できるための必要十分条件は,pがフェルマー素数になることである.□
【補題1】
複素数 α が作図可能であるための必要十分条件は、体拡大の列
Q=M_0⊂M_1⊂・・・⊂M_n⊂C
が存在し、[M_i:M_{i-1}]≦2 (1≦ i≦ n) かつ α∈M_n となることである。□
【補題2】
複素数αが作図可能であるとき,αのQ上の最小多項式の次数は2の冪である.□
【補題3】
可解群Gの組成列
G=N_0⊃ N_1⊃・・・⊃ N_r={1}
に対し, N_{i-1}/N_i は位数素数の巡回群になる.□
補題たちの証明は省略するが,補題1は高校数学レベルの複素数平面の知識でわかる.補題2は補題1から直ちにわかる.補題3は群論の復習であろう.
さて,定理の証明に移ろう.
「方程式のガロア理論」と「ガロア理論の基本定理」が見事に役立つが,この美しい証明を解説する本が少ないのは残念である.
(定理の証明)
<必要性>
1の原始p乗根ζ_pのQ上の最小多項式が円分多項式Φ_pだったことを思い出そう.
ζ_p が作図可能であるとき、補題2より
deg(Φ_p)=φ(p)(オイラーのφ関数)=p-1 は 2 の冪である。
<十分性>
p=2^m+1 とおく。Q(ζ_p) は X^p-1 の Q 上の分解体であり、
|Gal(Q(ζ_p)/Q)|=2^m である。
「方程式に関するガロア理論」より、
Gal(Q(ζ_p)/Q) は可解群である.
有限群が必ず組成列をもつことに注意せよ.
補題3より Gal(Q(ζ_p)/Q) の組成列
Gal(Q(ζ_p)/Q)=N_0⊃ N_1⊃・・・⊃ N_r={1}
に対し, N_{i-1}/N_i が位数素数の巡回群になる。
群論におけるラグランジュの定理より
|N_{i-1}/N_i|=2 である。
「ガロア理論の基本定理」によってこの組成列に対応する中間体の列を
Q=M_0⊂ M_1⊂・・・⊂ M_r=Q(ζ_p)
とすると、N_i=Gal(L/M_i) となる。
[M_i:M_{i-1}=[L:M_{i-1}]/[L:M_i]
=|N_{i-1}|/|N_i|
=|N_{i-1}/N_i|
=2
なので、補題1より ζ_p は作図できる。□
ちょっとした考察を加えれば,正n角形が作図できるための必要十分条件もわかる.やってみよ.