宇宙の究極の始まりを「宇宙創成」と言いますが、実はこの部分はいくつかの仮説はあるものの、まだよくわかっていないのです。
その後につながっていく「インフレーション理論とビッグバン理論」については比較的解明されている部分なので、2つに分けて説明します。
(この2つを切り分けて考えないと混乱します)
--------宇宙創成についての仮説--------
宇宙は138億年前に時間も空間も存在しない「無」から誕生したという「無からの宇宙創成」という仮説が有名ですが、これを考えたビレンキン氏も、「無」が何であるかは、「量子重力理論」という新しい物理理論が完成しないと完全には説明できないと言われています。
それと、ここの部分の解釈が物理学者によっては「無」=「真空」だとして「これがビレンキン氏の正しい無の解釈である」としている人がいるようですが、これについては違和感を感じます。(無とは物理学的には完全な無はあり得ないから、無=真空と解釈するしかない。 という説明は違和感を感じる)
「別の真空から宇宙がインフレーションで誕生した」という仮説がおかしいというのではなく、それを肯定するなら、ビレンキン氏の「無からの宇宙創成」を用いるべきではないと私は思います。
この部分(宇宙創成)は他にもいろいろな仮説があり、3次元宇宙は高次元に無数に浮いている2次元の膜のようなもので、それらがぶつかりあってエネルギーが発生し、インフレーションやビッグバンが起きたとか(=ブレーンワールド仮説)、ビッグバン(膨張)とビッグクランチ(収縮)を永遠に繰り返している(サイクリック宇宙論)などがあり、どれが正しいのかわかっていない状態です。
また、奇抜なものとして、宇宙は2次元の情報から投影されたホログラムのようなものであるとか、仮想現実であるという少数派の説もあります。
--------宇宙創成後の仮説(通説や定説レベル)--------
通説や定説となっているのは、なんらかの宇宙創成の後に素粒子のように小さかった宇宙が誕生し、その内部の真空エネルギーによって「インフレーション」という指数関数的な宇宙の急膨張が一瞬で起こって、膨張に急ブレーキがかかると真空エネルギーが熱エネルギーに変化して、これがビッグバンとなったというインフレーション理論及び、ビッグバン理論です。
補足として、ビックバン時点ではまだ1cmの大きさだったというのはあくまでも、現在の半径465億光年である「観測可能な宇宙の範囲」の事なので、ビッグバン時点でも宇宙全体はその何倍も超巨大であったと予想されています。(ここも解釈がよく間違いやすい所)
ビッグバンの熱エネルギーから様々な素粒子が量子揺らぎによって、物質と反物質の粒子が対で誕生したり、対消滅して熱エネルギーに戻ったりを何度も繰り返していました。
(補足として、アインシュタインの有名なE=mc^2の式より、エネルギーから物質の基の素粒子が誕生することが可能である)
それから後の流れは下記となります。
①宇宙誕生の1秒後に「CP対称性の破れ」によって、10億分の1個の数の差で対消滅を逃れた物質だけが宇宙に残った。
②3分後に元素合成が起こって、水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム原子核が誕生した。
③38万年かかって、これらの原子が誕生した。(「宇宙の晴れ上がり」と言い、この時の名残の光が「宇宙マイクロ波背景放射」という電波として現在も観測され続けている=ビッグバン理論の実証)
④3億年後に、水素やヘリウム原子などが重力で集まって、やっと最初の恒星ができ(ファーストスター)、星の内部の核融合と超新星爆発によって、周期表にある様々な元素が生まれた。
⑤92億年後(今から46億年前)に太陽系及び地球が出来て私達が生まれ、宇宙誕生から138億年も経過したとされている。