破産寸前の薔薇農園物語です。
この手の映画ですから、もちろん最後は安心のめでたしめでたしで終わります。
この映画を観る目的が、薔薇を見る、や、花の交配や、花器農家の姿を見る、だと程よく満足出来ると思いますが、ドラマに比重を重くとる人には、どうかな、と思えました。
私は今、自分が花見シーズン中なので気分が乗って観に行きました。
所々素敵なシーンや演出がありましたが、正直、え、だめじゃん、おばちゃんだめじゃん酷い人だよ、と思ったり、三人の雇われ人のうち、ひとりにだけスポットが当てられ、残り二名がおざなりで、特に、怯えやすい小柄な女の子のエピソードがさっぱりで、不満です。
この雇われ三人ですが、破産寸前農園なので、当然人手を雇う余裕などなく、そこで社会復帰を必要とする更生施設の人を雇って経費を抑えようと、アコギなこと考えて雇った人たちで、ゆえにむちゃくちゃこき使われます。もちろん最後はめでたしですが。
まぁ、親から受け継いだ大事な家業の危機なので、おばちゃん、ちょっと追い詰められているだけで悪人ではないのですが。三人に悪事の手伝いさせたけどねっ。
雇われ三人組のひとりであるにいちゃんとのお別れの演出は素敵でした。きっと最後にうるっとくる人もいると思います。
流石、薔薇作りの名人。花言葉にも抜かりなし。こんな贈り物私も欲しいわ〜と思いましたが、私なら全く仕掛けに気づかず、素敵な絵葉書ねぇ、で終わっていたでしょう。
薔薇作りの名手とうたわれる農園主のおばちゃんと、このにいちゃんが物語の主軸といえます。人生の深掘りは無いですが。
このにいちゃんは、切ない人生だったことがわかりますが、このにいちゃんがついに親に三行半突きつけるところもよいです。日本で薔薇をあげるといえば彼女へのプロポーズとか〜嫁はんのお誕生日とか〜ですが、手間暇真綿でくるんで大切に育てなきゃいけない薔薇と自分の人生を比べて辛い決断をするにいちゃんにエールを送りたくなりました。
そして、別れの贈り物の演出に気付いたところも、この子はやれば出来る子、賢い子、とエールを送りたくなるシーンとなっています。
映像は、隅々まで薔薇ですから、薔薇好きなら眼福です。
交配のシーンや、交配後の種をとるシーンは、とても興味深く魅入ってしまいます。
御墓参りの人に薔薇を売り込む思い付きなど、金策のために鉢の薔薇を売りまくるところは面白いです。フランスもお墓参りの季節の花は菊なんですね。
冒頭の薔薇コンクールの会場も素敵です。
薔薇園に行きたくなります。
花器業の個人農園と大企業の違いや、特許などにも触れています。
香り付き上映だったら素敵だっただろうなぁと妄想できる映画でした。
久しぶりに横浜にあるローズガーデンに行きたくなりました。さほど大きくない施設ですが、溢れかえる多種な薔薇が今が見頃なはずです。薔薇で体が埋もれてしまうぐらいの薔薇まみれになれる場所です。(住宅展示場の中にあるのです)
でもマスクしてたら薔薇を愛でる楽しみが半減です。香りを愛でられない〜。
早くマスクのない日常に戻りたいと切に願った映画観賞となりました。
美しい映像はお薦めです。