市の目が不自由な設定に関しては、常に瞼をつぶっている描写も含め、いろいろ疑問がないではなく、時には普通に見えているかのようなユーモラスな表現もあるのですが… https://www.youtube.com/watch?v=gwrUPwaVG-o 個人的にシリーズの中でも最も感激したシーンに、「座頭市地獄旅」（1965）の中で、病気の子供のためにやっと手に入れた高価な薬を持って帰る途中、葦が密生した湿地帯でヤクザ一味に襲撃され、戦っている最中にその薬を落としてしまったことに気づき、市は慌てて足元を手探りで必死に探し回るというのがあり、観客にはスクリーンの市の足元に薬箱が落ちているのがはっきり見えているのに、市の手探りがその箱の数センチの所を何度も虚しく通り過ぎるという絶妙の芝居をワンカットでかなり長い時間、勝新は見せてくれます。 すごいのは、勝新の顔がその足元の薬箱の方を向いてないことで、位置をチラ見で確認しながら手が触れない芝居をしているようには見えないことです。 市は目が見えないんだ…ということの悲劇性を観客にしっかり伝えた名シーンだったと思います。