もう一人本物として挙げるならば、ウィリアム・クルックスを徹底した懐疑派からトリックの片鱗すら見出せなかったとして100％の肯定派に鞍替えさせたダニエル・ダングラス・ホーム通称D・D・ホームがいます。 ※ウィリアム・クルックス http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%82%AF%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9 彼はタリウム元素の発見者でありクルックス放電管の発明などで世界的な名声を博した、新進の化学・物理学者であり英国最高の化学分析家と言われた科学者でした。 彼は自らが心霊研究に手を染めたのは、スピリチュアリズムの詐術を見破り人々の迷妄を明らかにしたかったからだと述べ、実際にダニエル・ダングラス・ホームなどによる心霊現象の研究を始めるにあたり「科学的手段を次々と採用していけば、スピリチュアリズムの愚にもつかない現象を、魔術と魔法の掃きだめに放り込んでしまう学者が続出することになろう」と結んだ『近代科学の光に照らしてスピリチュアリズムを検証する』と題する論文を発表しました。 イギリスのジャーナリズム界はクルックスのこの声明を大歓迎し、“これですべて片付く”と確信しましたが、ところがその期待は見事に裏切られ公表された実験報告の内容が、１００％心霊現象を肯定するものでした。 ※D・D・ホームに対するウィリアム・クルックスの検証実験に関するリンク http://foochan28.at.webry.info/ 以後も次々と調査・研究に参加した科学者達は事実上《全員一致で》霊魂説を支持することになりました。 これに対して頑なな否定派であり、この研究報告を英国学士院の機関誌に掲載することを拒んだ事務局長は、クルックス博士の実験に“実際に”立ち会って自分の目で真実を確認するように求められたが応じることなく拒否の態度を固持しました。 この時期“実際に”自ら心霊現象について検証を行ってその実在を“是認した”学者の中にはカミーユ・フラマリオン、チェザーレ・ロンブローゾ、シャルル・リシェ、アルフレッド・ウォーレス、ウィリー・ライケル、フレデリック・マイヤース、ヨハン・ツェルナー、ウィリアム・ジェームズ、オリバー・ロッジ、アンドリュー・ラング、アンリ・ベルグソン、ギュスタヴ・ジュレー、シュレンク・ノティングなど時代を代表する学者が名を連ねており、“知られているだけでも”５０名を越える学者達が当初の懐疑的態度から１８０度方向転換して心霊現象が真実であることを証言しています。 他にも当初は心霊現象などは詐術だと考えて暴いて公表するつもりで調査を始めたところが調べてゆくうちに全く逆の結論に達して、この結果を人々に知らせることは義務だと感じるようになったとする最高裁判事のジョン・Ｗ・エドマンズややはり最初は学者達の中にも“可哀そうに、頭に弱いところがあるのだな”と考えていたシャーロック・ホームズで有名なコナン・ドイルといった知識・文化人も加えるとどれ程の数の人々が否定派から肯定派にその立場を転向したのか想像も出来ません。 しかもその逆は全くと言って良いほど存在しなかったのです。 《これらの“元懐疑派”の人々に共通する特徴は、当初はいかに否定的な立場であっても、自ら検証を行った人々であり、逆に否定派を貫いた人々は自ら研究を行うどころか、研究結果の存在自体すらも一切拒否した人々であった》という点です。 まさに《無知と偏見は双子の兄弟》です。 いやこの場合は偏見が無知を生むというべきかも知れません。 その中にパイパー夫人の調査を行った極端な懐疑主義で知られたイギリス心霊協会の審問官ことケンブリッジ大学教授のリチャード・ホジソンもいました。 ※チャード・ホジソン／パイパー夫人への調査研究 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%83%89%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%82%B8%E3%82%BD%E3%83%B3 結局のところ正面からこの分野の研究に取り組んで最終的に霊魂説を受け入れなかった学者は一人もいませんでした。 “本物の霊媒”は決してこの二人だけが本物ではなくシルバー・バーチの専属霊媒のモーリス・バーバネルやオズボーン・レナードなども霊媒としては第一級でしたし、霊媒能力に限らなければ心霊治療家にもすぐれた能力者が数多くいました。 今でも本邦にも“本物の霊媒”が少なくとも一人は存在しています。 ※出典『コナン・ドイルの心霊学』コナン・ドイル（潮文社）『近代スピリチュアリズムの歴史』三浦清宏（講談社）