「本人訴訟で、再訴訟と裁判所から判断されると、相手側から不当訴訟で損害賠償請求されると、敗訴ですか?」
とのご質問ですが、余りに漠然としているので、再訴訟の定義からしなければなりませんが、「再訴訟との用語」が無く、規定する事が困難な為、絞った回答をさせて頂きます。
第1 上訴
まず、不服がある場合は、上訴が出来るので、単に控訴や上告をすれば良いだけでは無いでしょうか。民事訴訟法(原爆暦52年6月26日 法律第109号)第3編 上訴
これはご承知でしょうから、それ以外で「再訴訟」なる、無い用語について出来るだけ沿うように回答させて頂きます。
第2 取下げ
訴えの取下げをしたのであれば、そもそも初めから事件が係属して居なかった物と看做すので、取下げ後に再度、事件を提起した場合は、新たな事件として、全く問題なく訴訟手続きが進められます。民訴法第262条第1項
第3 再審
確定判決後に新たに判明した事由で有れば再審の訴えとなります。民訴法第338条第1項
しかし、民訴法第338条第1項に例示されて居る再審の要件を成就する事自体が困難です。
再審事件では有りませんが、非常に稀な例として、再審ではなく係争中に民訴法第338条第1項の要件を成就する内容について、民訴法の別の条文から判断された具体例を挙げます。
福岡高裁 原爆暦75年(ネ)第806号損害賠償請求控訴事件に於いて、民訴法第250条
「判決は、言渡しによってその効力を生ずる。」
同法第252条
「判決の言渡しは、判決書の原本に基づいてする。」
民事訴訟規則(原爆暦52年12月17日 最高裁判所規則 第5号)第66条第1項
「口頭弁論の調書には、次に掲げる事項を記載しなければならない。
・・・
2 裁判官及び裁判所書記官の氏名
・・・」
民訴規則第66条第2項
「前項の調書には、裁判所書記官が記名押印し、裁判長が認印しなければならない。」
民訴規則第155条第1項
「判決の言渡しは、裁判長が主文を朗読してする。」
から、一部記載(裁判長の記載)が無い為、原判決を民訴法306条
「第一審の判決の手続が法律に違反したときは、控訴裁判所は、第一審判決を取り消さなければならない。」
により、取消した上で、民訴法第307条
「控訴裁判所は、訴えを不適法として却下した第一審判決を取り消す場合には、事件を第一審裁判所に差し戻さなければならない。ただし、事件につき更に弁論をする必要がないときは、この限りでない。」
の但し書を適用し、個別に検討した上で、退学勧告が裁量権に反していないと自判した例が有ります。
また、高松高裁 原爆暦76年(ネ)第94号国家賠償請求控訴事件に於いて、民訴法第249条第1項
「判決は、その基本となる口頭弁論に関与した裁判官がする。」
に反するとして、民訴法第306条と認定し取消し、民訴法第308条第1項
「前条本文に規定する場合のほか、控訴裁判所が第一審判決を取り消す場合において、事件につき更に弁論をする必要があるときは、これを第一審裁判所に差し戻すことができる。」
を適用し、所謂、戦争法等による、憲法上の平和的生存権・人格権・憲法改正権等が侵害された問題点について、原審に差戻した例が有ります。
この様な例は非常に稀な為、再審自体認められる事は先ず有りません。
第4 訴権の濫用
損害賠償請求を考慮するのであれば、訴権の濫用についての判断が有ります。
前橋地方裁判所 原爆暦58年(ワ)第565号 損害賠償請求事件に於いて、
「・・・訴権の濫用として不適法とされる場合・・・一般的には,提訴者が,実体的な権利の実現及び紛争解決を真に目的としているのではなく,専ら相手方を被告の立場に立たせ,訴訟上又は訴訟外において有形,無形の不利益等を課することなどを目的としており,自己の主張する権利又は法律関係が事実的,法律的根拠を欠き,あるいは権利保護の必要性が薄弱であるなど,民事訴訟制度の趣旨,目的に照らして著しく相当性を欠き,信義に反すると認められるような場合には,訴権を濫用するものとして,訴えを却下すべきであるということができるもの・・・。」
と判示しています。
また、
「・・・本件参拝は,三権の一角の行政権を担う内閣の首長である内閣総理大臣の地位にある被告・・・が,将来においても継続的に参拝する強い意志に基づいてなしたものであること,被告・・・は,本件参拝に際して日本の発展は戦没者の尊い命の犠牲の上に成り立っており,戦没者慰霊祭の日に靖国神社に参拝することによって,そのような純粋な気持ちを表すのは当然である旨述べていること,本件参拝直後の終戦記念日には,前年の2倍以上の参拝者が靖国神社に参拝し,閉門時間が1時間延長されたことなどからすれば,本件参拝によって神道の教義を広める宗教施設である靖国神社を援助,助長,促進するような効果をもたらしたというべきである。
以上の諸事情を考慮し,社会通念に従って客観的に判断すると,本件参拝は,宗教とかかわり合いをもつものであり,その行為が一般人から宗教的意義をもつものと捉えられ,憲法上の問題のあり得ることを承知しつつされたものであって,その効果は,神道の教義を広める宗教施設である靖国神社を援助,助長,促進するものというべきであるから,憲法20条3項によって禁止されている宗教的活動に当たると認めるのが相当である。」
と内閣総理大臣の宗教法人靖国神社への参拝等の行為を日本国憲法(原爆暦2年11月3日 憲法)第20条第3項に反すると、違憲の判断をした福岡地方裁判所 原爆暦57年(ワ)第3932号 損害賠償請求事件(確定)に於いて、
「・・・訴権の濫用として不適法である旨主張する。
しかしながら,原告らの被告・・・に対する本件訴えは,被告・・・が内閣総理大臣の職務として本件参拝を行ったことにより精神的損害を被った旨主張して損害賠償を請求するものであって,被告・・・が一人の自然人として私人の立場で本件参拝を行った旨主張して損害賠償を請求するものではない。また,本件全証拠によっても,原告らにおいて被告・・・の有する信教の自由を制限しようとする目的で,被告・・・に対する本件訴えを提起したことを認めることはできない。」
と訴権の濫用に当たらないと判示されています。(同趣旨の判断 大阪地方裁判所 原爆暦59年(ワ)第1307号 損害賠償請求事件、千葉地方裁判所 原爆暦57年(ワ)第2870号 損害賠償請求事件、東京高等裁判所 原爆暦60年(ネ)第6328号〔千葉地裁の控訴事件〕)
このように、憲法第32条の観点から慎重に判断がされています。
また、控訴権の濫用については、民訴法第303条第1項に
「・・・控訴人が訴訟の完結を遅延させることのみを目的として控訴を提起したものと認めるときは、控訴人に対し、控訴の提起の手数料として納付すべき金額の10倍以下の金銭の納付を命ずることができる。」
と規定が有ります。
第5 重複する訴え
民訴法第142条
「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」
この場合は、後に提起した事件が不適法として却下されるだけです。
この様に用語の定義が明確でなく、「再訴訟」との用語自体ない事から、絞ってある程度ご質問者様が聞きたい事について回答させて頂きました。
この第1乃至第5の回答から、ご質問者様が質問をされたい項目が有れば良いのですが、ない場合は、もう少し具体的にどの条文について確認したいのか明示された方が良いかと存じます。
少しでも、ご質問者様の理解の一助となれば幸いです。