士_師_司
接尾的に用いる「士・師・司」は、いずれも一定の資格や職業に名付けられた名称ですが、いずれも字音で「シ」と読むために紛らわしいが、それぞれの漢字の持つ意味がその使い分けの基礎になっています。
「士」とはすなわち「国家・国民的な高い見地から判断して有用と思われる“資格”を持つ者」であり、
一方「師」とは「“プロとして”、ある物事を“専門に”行なう者、また、その道の“技芸”にすぐれている者」を指す。
ちなみに「師」には、この他にも「教師」「猟師」「詐欺師」「ペテン師」などもある。
……『漢字の使い方ものしり辞典』(宇野義方監修・大和出版刊)より
以下は、文化庁編集「言葉に関する問答集 総集編」P137-138より抜粋・要約
●「士」は、「事を処理する才能のある者」で、「才能をもって官に使える者」を指すのが本来の意味です。
..そのことから、専門の技術・技芸を修めた者をいうようになり、称号や職業名に付け、あるいは人を尊んで用いるようになりました。楽士、騎士、義士、紳士、戦士、闘士、武士、弁士、勇士、力士、烈士などは、いずれもこの意味での一般語です。
...一定の職業に就く資格の名称として「…士」という名称を設けたのも、このような用い方に由来するものです。
例:栄養士、海技士、行政書士、建築士、公認会計士、歯科技工士、司法書士、税理士、測量士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、弁護士、弁理士など、これらはいずれも国家試験等によって取得できる資格の名称です。
●「師」は、「人々を集めた大集団」ですが、それが転じて「人の集団を導く者」あるいは「教え導く者」の意味になりました。
...そのことから、一芸に達した者をいうようになり、称号や職業名に付け、あるいは人を尊んで用いるようになりました。技師、教師、講師、大師、導師、仏師、法師、牧師、律師、漁師、講釈師、宣教師、道化師、人形師、能楽師、表具師などのほか、訓読語に付いて、「占師、鋳物師。軽業師、指物師」など、広く用いられています。
...一定の職業に就く資格の名称として「…師」という名称を設けたのも、このような用い方に由来するものです。
例:医師、歯科医師、獣医師、家畜人工授精師、灸(きゅう)師、柔道整復師、調理師、鍼(はり)師、美容師、薬剤師、理容師など、これらも国家試験等によって取得できる資格の名称です。
●「司」は、本来は「役所」の意味であり、「その役に責任を持つ者」を指しています。
...そのことから、その役目を受け持つ人をいうようになりました。行司、宮司、郡司、国司、宰司、祭司、有司、斎院司、造酒司、鋳銭司、兵馬司など。
...職業の名称として、「・・・司」という名称が用いられるのも、このような用い方に由来するものです。
例:児童福祉司、身体障碍者福祉司、精神薄弱者福祉司、保護司
これらは、いずれも特別の職務の名称という点が、上記「…士」「…師」の場合と異なっています。ただし、これらのうち「…福祉司」はいずれも地方公務員ですが、最後の「保護司」だけは、法務大臣から委嘱を受けた民間人です。
【参考文献】文化庁編集「言葉に関する問答集 総集編」P137-138より抜粋・要約