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医学的に認められた言葉ではありません。 ゲーム脳とは、日本大学文理学部体育学科教授である運動生理学者(医師ではなく、免許も持っていません)・森昭雄氏が提唱した概念です。 彼は、自ら作成し、特許を取った脳波計(医療器具としては認められていません)で、脳のα波とβ波の割合を測定したところ、認知症の人の状態と、ゲームを多くやっている人の状態が、ともにα波優位であったことから、α波優位であることは認知症と同じような状態である、としました。そして、それを「ゲーム脳」と名付けました。 そして、これを元に、今度は、「ゲーム脳」とされた人に話を聞き、その結果、「物忘れしやすい」「キレやすい」などと話していたことから、「キレる」犯罪や、「学力低下」などの原因にもなっている、と言うような形で論を進めています。 ただし、これは、森昭雄氏が自ら設立し、理事長に就任した日本健康行動科学会という団体でのみ、成果が口頭発表されているだけのもので、全く科学的に調査されたものとは言えません。 科学的に認められるためには、学術論文を書き、それを他の科学者にも確かめてもらう、という作業が必要なのですが、森氏は、それを一切行っていません。つまり、学術的に、全く認められていないもの、と言えます。 また、この内容にも様々な問題があり、そもそも、「α波優位の状態が、認知症と同じある」ということ自体が、森昭雄氏しか言っていないものです。 この論というのは、「犬を調べたら、四本の脚を使って歩いていた。牛も、四本の脚を使ってあるいていた。だから、牛は犬と同じ動物である」というのと同じようなもので、全く意味のないものです。しかも、森昭雄氏は、著書の中で推奨する運動でも、ゲームと全く同じような傾向をしめているにもかかわらず、運動は良いもの、ゲームはダメなもの、と言う極めて恣意的な解釈を示しています。 さらに、問題なのは、脳波計の問題です。先にも書きましたが、この脳波計というのは、森昭雄氏が独自に作らせたもので、医療器具としての認可は受けていません。メディカルシステム研究所の岡田保紀は、「これは、脳波ですらなく、筋電図である」と言っているものです。そういう部分にも問題があります。 森氏は、講演などの中で、 「幼い頃からゲームが大好きで、バイトまでゲームセンターでしている大学生は、物忘れが激しくキレやすいという。社会生活を送るのに、問題が起こるのではないか心配だ」 などと話しています。この文章だけで、森氏の論理的な破綻はよくわかると思います。 認知症状態だというのに、バイトをこなせて、大学にも入れたのはなぜでしょう? そんな人は、バイトもできなければ、大学にも入れないと思うのですが…。 「ゲーム脳」という言葉は、勝手に一人歩きして、森氏が言った意味以外の様々な解釈がされることがあります。 しかし、その実態は、といえば、完全な疑似科学、ニセ科学と呼ばれるような類のものです。そういう意味では、「ゲーム脳というものは存在しない」と言えるでしょう。 ただ、勘違いしないでいただきたいのは、それは、「ゲームをやると、脳に悪影響がある」という可能性そのものを否定しているわけではない、ということです。ただ、「ゲーム脳」という概念は、科学的根拠はないし、また、科学的に考察することも放棄しているデタラメである、ということです。
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質問者からのお礼コメント
森さんのこうであってほしいという理想像が見えました。ご丁寧な解説に感謝します。
お礼日時:2008/10/18 9:50