ブラックホールにはなりません.
運動による質量の増加って,見る方向によって異なるんですよ.昔は「横質量」とか「縦質量」とか言っていたんですが,同一物体に対して複数の質量があるって変ですよね? 実際現代の相対論では「横質量」「縦質量」なんて使いません.完全な死語です.また加速器などで飛び回る素粒子から見れば,我々や他の恒星が高速で移動していることになります.それで質量が増えてしまうなら…やっぱり変ですよね?
物体や粒子の「質量」とは,それが静止しているように見える観測者が計測した「静止質量」のみを言います.ブラックホールになるかどうかも,この「静止質量」で考えます.
ただし,粒子ではなく構造を持った物体の場合,それを構成している粒子の運動エネルギーも質量(=静止質量)に寄与します.要するに,物体内部で粒子が運動していても,物体の重心が移動しない,速度ゼロであるなら,静止していると考えるのです.このような静止状態で計測した質量が,その物体の静止質量であり,真の質量と言えます.
例を挙げれば,太陽の質量はそれを構成する原子などの運動エネルギーも含めた質量になります.また陽子や中性子の質量は,それを構成しているクォークの質量(=静止質量)を加算しただけでは足りません.クォークの運動エネルギーが寄与しているのです.