「言う」
私たちが普段口に出して話す場合の「イう」は、すべて「言う」です。
「悪口を言う」「お世辞を言う」「答を言う」「A氏はこう言った」など、みな、この「言う」で表記します。
「云う」
小説などで、「彼女は帰ると云った」「彼が云うには……」という表記を見ることがありますが、これは厳密にいうと誤用です。
「云う」は、「・・・・・・と呼ばれる」の意味を持つ表現であり、「言う」とはニュアンスが違います。
「Aさんと云う教授は……」「スイスと云う国は……」
「男と云う男はすべて戦争に……」「しょせん、そう云うものさ」
といった使い方をするのが一般的です
(ただし、現在は「云」は常用漢字表に掲げられていないので、仮名書きが一般的な表記です)。
なお、「いう」という意味の漢字は、他にもあり、
ちなみに、「いわば」というときは「謂わば」の表記を用い、そこから「謂う所の→所謂(いわゆる)」といった言い回しも出てくるわけですが、
「常用漢字表」に従えば、この「謂う」は「言う」、「所謂」は「いわゆる」と表記するようになっていますので、あえて用いる必要はありません。
また、もう一つの「イう」の漢字には「曰(いう)」というのもあって、読み方としては「曰(いわ)く」「曰(のたまわ)く)」漢文で習ったとおりです。
「日」は「ヒ・ニチ」、一方「曰」はヒ・ニチとは無関係の「口」が基本形で、「口」に「L」(口を開いたところを表す)が複合してできた文字であり、おのずと「イう」の意味を表しています(白も「曰」の仲間)。
……宇野義方監修『漢字の使い方ものしり辞典』大和出版より要約・抜粋