ニコニコ大百科を見ると、フリーソフトウェアやUNIXライクといった
Linuxを理解する上で、重要なキーワードのエントリーが無いくらいで
なかなか、あてにならない部分があったりします。
無料ではなく自由としただけで意味を理解できる人は
より詳しい人を、すでに読んで理解している人だけです。
ごく基本的な違いを挙げると
無料ソフトには自由では無いソフトも非常に多いということです。
たとえばIEは無料ソフトとして一世を風靡したものの
インターネットのIE汚染が問題視されるようになり
Google Chromeの登場で、急激にシェアを失っていきました。
そして、すでにIEのサポートが終わって、惜しむ人もいますが
IEのサポートを続けるかどうかは
権利者であるMicrosoftの一存で、終わるものは仕方がありません。
IEを使いたくても、EdgeやChrome,Firefoxなどに移行するしか無い
この不自由が、無料ソフトIEにはありました。
そういった不自由は、昔からありますし
例えば鮪ペイント(MPS)は転載負荷の無料ソフトでしたが
のちにアセンブラで高速化したマルチペイント(MPS)が市販され
私はMPSユーザーだった頃がありました。
しかし鮪ペイントを入手できず、マルチペイントを購入しています。
充分価格的に魅力のあるソフトでしたし…当時クレジットカードを作れず
鮪ペイントがダウンロードできる商用ネットに入会自体できず
間抜けな都合で、市販版を買わざるを得ませんでした。
そして、PC-9801のMS-DOSから非PC-9801へ移行する時点で
MPSを使い続けることはできなくなり、利用をやめています。
そういう不自由が、単なる無料ソフトにはあるのです。
Linuxに代表されるオープンソースソフトウェアは
先行していた1985年のGNU宣言やフリーソフトウェア財団のあとに
2000年代に広まった概念であり開発スタイルです。
日本でパソコン通信が始まった1985年にはGNU宣言がありましたが
その後、無料ソフトの頒布が盛んになったパソコン通信で
無料頒布されたソフトのほとんどは、明確なライセンス条項を持たず
対価の有無程度しか明示しないのが通例でした。
結果的にただの無料ソフトが広く広まっていく中
GPLのような自由なソフトウェアの概念はなかなか広まらず
GPLやBSDライセンスなどのさまざまな古くあるライセンスが
オープンソースソフトウェアライセンスと総称を得たのは
2000年前後だったと記憶しています。
その自由があればこそ、GPLで公開されたLinuxカーネルも
BSDライセンスで公開されたFreeBSDなども
1990年代のPC-UNIXブームで、誰でも自由に使うことができましたし
BSDライセンスとGPLの規約の違いが、結果的に
Linuxの発展をより促すことになり
2000年代のLinuxの大躍進に繋がりました。
OSSライセンスの条件はぐぐればわかると思いますが
誰もでもソースコードを入手し、ビルドし使う権利があり
改変し、それを再配布する権利もあるのがOSSライセンスの自由さです。
そのうち、GPLとBSDライセンスの特徴的な違いは
改変したソフトウェアをバイナリーで頒布する場合に
GPLはソースコードを公開する義務があり
BSDライセンスには改変した部分を秘匿することができます。
これは一般消費者にとっては前者がより自由で
企業においては、後者のほうがより自由となる違いで
結果的には、新しい技術がいろんなところから集まって
それを共用して発展してきたのがLinux系OSで
PS3以降やSwitchのような、高性能化のための特別な技術を
秘匿した企業にとっては、BSDライセンスのほうが好ましく
FreeBSDの成果が利用されたりしていますし…
macOSやiOSにも、BSDライセンスのプロダクトが採用されています。
(もっともBSDライセンスでも無いソフトが大量にあります)
対して、AndroidやChrome OSにはGPLのプロダクトが多数採用され
それを背景に、PC向けのAndroidやChromium OSが成立するのも
そういった自由さの成果です。
そういった真っ先に大きな声で自由を掲げてきたRMS氏は
特許やDRMという障壁を重大な問題だと考えていますし
GPLも特許関連の規定が盛り込まれたGPLv3が2007年に出ていますが
Linuxカーネルは、GPLv2が適用され続けていて
RMSが考える自由が、より先鋭化したことを
行き過ぎた自由と考える人も少なくありません。
自由なソフトは、結果的に多くの人が無料で利用できますが
自由であればこそ、その適用範囲は大きく広がっていくこともあります。
多くの人が意識もしない部分が
ライセンス上の違いとなったりもしているので
なかなか簡単には理解できない部分があります。
特に市販ソフトを買わず、無料ソフトを多用し
それでいてWindowsを間接的に買い続けている人の中に
OSSの自由を、なかなか理解できない人がたくさんいるようです。