複素対数関数を log(z):=Σ{(-1)^n/(n+1)}(z-1)^(n+1)としてz∈Δ(1,1)上で定めます。 ただしここで、Δ(1,1)={z∈C; |z-1|<1}としています。 1中心、半径1の開円盤です。 このとき、 exp(log z)=z (z∈Δ(1,1)) log(exp z)=z (exp z∈Δ(1,1)) となります。 (Δ(1,1)∩R上で、この類似がなりたつので、一致の定理より、Δ(1,1)上でこれが成り立ちます) さて、z∈Δ(1,1)を取ります。 θ∈(-π/2, π/2)として、ι:=θ+2πとします。 このとき、極形式で z=r exp(iθ)=r exp(iι)∈Δ(1,1)です。 r=exp(log r)として、 z=exp(log r+iθ)=exp(log r+iι)∈Δ(1,1)です。 従って、上の式から、 log z=log(exp(log r+iθ))=log r+iθ かつ、 log z=log(exp(log r+iι))=log r+iι=log r+i(θ+2π)≠log r+iθ となります。 この等式変形でどこにおかしいところがありますか? Δ(1,1)上、収束冪級数で定めたlogは1価のはずですが、その性質に従って計算をするとΔ(1,1)上、無限多価となります。 これはどうしてでしょうか? z∈Δ(1,1)にexpで移るwつまりexp(w)=zとなるwが無限にあるので、expの逆としてのlogに多価性が出るのだと思いますが、冪級数であれば1価なはずです。 どこがおかしいのでしょう? ここでの議論は裳華房の野口潤次郎『複素解析概論』2章を参考にしています。
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