対象の重箱は丁寧な保管で、能書きに本堅地と書かれているので、輪島塗蒔絵重箱と思われます。 添え紙には明治14年8月に生まれた子供の記念にしつらえた高級家具と書かれ、正月や誕生日の祝いに御馳走を入れて家族で祝ったものでしょう。子供さんは明治43年8月17日に亡くなったようですので、その後は家族で使用したのでしょう。 輪島塗漆器は、堅地とあるように、木地箱＋下地漆＋布着せ（器全体に布を張って漆で固める）＋珪藻土塗（能登半島でしか産出しない軽量な海藻が数千年堆積して強靭な硬化土となったもの）＋漆塗り（10層ほど塗り重ねる）＋蒔絵…の工程それぞれ数回の工程を経て（総てでは50工程程度で）製作される日本での（勿論世界での）最高級の漆器です。 現代で同じ蒔絵重箱を製造すれば少なくても50万円位するのではと思います。強靭な漆器ですが角などが当たって禿たりしていれば補修し、乾燥しにくい場所に保管すれば、さらに100年は持つでしょう。