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最高裁判決とその解説に齟齬があるのでは? 昭和59年1月20日第二小法廷判決(事件番...

san********さん

2010/6/3002:06:45

最高裁判決とその解説に齟齬があるのでは?
昭和59年1月20日第二小法廷判決(事件番号昭和58(オ)171号)と、最高裁判所判例解説民亊編昭和59年度版との相違について。
参考:判例評論283号181頁 一審判決の阿部浩二評釈

標記判決において、『美術の著作物の原作品に対する所有権は、その有体物の面に対する排他的支配権能であるに止まり、無体物である美術の著作物自体を直接排他的に支配する権能ではないと解する…』と示し、シナ唐代の墨書「自書告身帖」の原本所有者の同意を得ずその写真を使用収益する行為を正当と認めた。同事件の一審判決で、『無体物である美術の著作物(美術的価値)』と明記され、これが上級審で取り消されていないから最高裁も『美術の著作物=美術的価値』との前提で判決したと解される。そうすると、絵画所有者はその絵画の美術的価値を所有権により支配することができないことになり、支配できるのは美術的価値を除いた有体物(紙と絵具と額縁)という奇妙なことになる。
一方、同最高裁判決の解説(標記)では、『所有権者は、その所有物を第三者の観覧に供するかどうか自由になしうることであり、また、観覧者との契約で入場料を徴することも自由になしうることである。右の入場料の徴収や写真撮影の許可などは、原作品について有する所有権に基づくものと解される。』(清永利亮調査官)との、極めて妥当かつ常識的な解釈をしている。
上記判決と解説に齟齬はないだろうか。あるとしたらなぜなのか。
判決には以下のとおり、複数の明らかな誤りがあると思料される。
1,当該墨書の制作時期は唐時代であり、この当時当の唐はもとより世界のいずこにおいても著作権法などなかったから、法不遡及の原則に照らし、同書は著作権の消滅した著作物ではなく、著作権と無関係なものと解され、著作権法は適用されない。
2,文芸作品はそれ自体が無体物であるが、美術品はそれ自体が有体物であって、無体物としての面は観念的にしか存しない。判決はこの差異を認識していない。
3,無体物は観念的・抽象的存在だから、非可視的であり写真に写らない。写真に写るのは有体物としての面であり、従ってこれは所有権の客体と解される。
4,判決で、『所有権に基づいて著作物の複製等を許諾する権利をも慣行として有するとするならば、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義を没却する』としているが、これは標記阿部評釈をパクッたものだ。この事実は最高裁が判決に自信がなかったことを示す。著作権は法定期間経過後消滅するが所有権は客体が存する限り存続する。阿部評釈は、この両権利の客体を混同したもので、誤りだ。(字数の関係で「です]調にできませんでした)

補足当該最高裁判決には、私の知る限り下記の反対学説があります。
1,田中康博「写真影像に対する所有権保護について」『京都学園法学』1993年第2.3号136(74)頁、京都学園大学。
2,辻正美「所有権と著作権」『裁判実務大系』(旧版)27[知的財産関係訴訟法]390頁、1997年、青林書院。
他にもあったらご教示ください。

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kin********さん

2010/7/100:36:11

質問者です。everさんありがとうございました。
1,「美術の著作物=美術的価値」だとしたら絵画を買う際著作権も買わない限り美術的価値のない有体物だけしか得られないのですか?この点にご意見がないようですが。
2,古代・中世の【著作物】に著作権を付与する意味がありますか?著作権法未整備の地域の場合、どこの著作権法を適用するのですか。著作権法のどこにも「現存する著作物すべてに適用する」との文言はありません。明治著作権法にはこの逆の趣旨の条文はあります(47条でしたか)。
3,原稿なしでする講演も、台本なしの漫才も著作物として保護されます(半田正夫、田村善之)。小説等の原稿は無体物である著作物を記録したものにすぎず、これは楽譜と音楽の関係と同じです。文字を持たなかったアイヌの叙事詩ユーカラの存在によっても、言語の著作物に必らずしも原稿を要しないことがわかります。もし、お説のとおりなら、絵画は原稿にすぎず、絵画なして美術の著作物が存在することとなりますが、それこそが著作権の客体であって、絵画はその美術的面を含め所有権の客体と解されます。絵画を見せるかどうかは所有権者の意思により決めることができるのですから、絵画を見るのと同様の効果をもつ写真の開示についても絵画所有権者が決定権を有すると解するのが自然です。皆さんは著作権だけで考察されますが、民法に依拠し、絵画写真は絵画を元物とする果実と解することもできると愚考します。そもそも、写真を複製物とすることに問題があります。版画の複製物とは版を起こして刷ったものであり、油絵の複製物も筆を使って描いたものであるべきです。絵画の場合、構図が思想・感情、筆致・色調が創作的表現(加戸守行)とされていることからもこのことが分かります。
4,上述のとおり、絵画所有権者はその所有権に基づいて美術的面を支配しているのですから、著作権が消滅しても何ら所有権の支配に影響はないと解されます。阿部先生自身、「両権利の保護は同一平面において論ずべきでない」旨述べています(別冊ジュリスト)。
なお、当該判決の慣行否定部分について清永調査官は、「入場料の徴収や写真撮影の許可などが、所有権の有無と関係なしに慣行として行われているということには疑問があるが、仮に右のような慣行があるとしても、この慣行は、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義を全く没却してしまうものであって、これを法的規範として是認することはできない…」と述べ、判決のおかしな部分を是正しているように読めます。

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oyo********さん

編集あり2010/7/612:17:03

質問者です。
1,遡及について
当該判決は、本件墨書を「著作権の保護期間が満了し著作権の消滅した著作物」との前提でなされています。マスターさんのお説に照らせば前提からして当該判決に誤りがあることとなります。
2,無体物・パブリックドメイン
標記の概念は無体(知的)財産権の観念により生じたものであって、自然発生的に古代から存在したものではないと考えられす。
したがって著作権法制定以前の物の美的面が公有だったとは考えられません。美的面とはその物の表面ですが、物の所有者はその者の内部も表面も当然に支配していたでしょう(法定の所有権はなくても所有権的観念はあったでしょう)。
3,著作権譲渡
標記については同法61条に明記されており、民法を参照するまでもなく、著作権譲渡契約によらなければ著作権は譲渡されないとされていますからマスさんは逆の見解をしていることになります。作品が主物でその著作権が従物とは面白い発想ですが、お説のとおりなら小説のナマ原稿を焼却すとその小説の著作権も消滅することになります(従物は主物の処分に従う)。
4,所有権
「所有権は、客体を一般的、全面的に支配する権能であって、その内容は、使用、収益及び処分の権限を含む、どのようにでも利用することができる権利である。」(我妻栄【物権法】)「所有権は、物の有する使用価値及び交換価値の全部に全面的に及ぶものである。」(舟橋諄一【物権法】)「所有権は、有体物の全面的な支配権であって、そこから生ずる利益を自己に帰属させることのできる権利である。」(原島重義他【民法講義2】)
美術の著作物が言語の著作物と本質的に異ならないならば、絵画は文芸の原稿に相当することとなり、著作物は原稿である絵画とは別に存することになります。そうすると絵画はその美的面を含め所有権の客体であり、それゆえ見せるかどうか、対価を徴するかを所有権に基づき決定できます。そうであれば、その絵画を開示するに等しい効果をもつ写真開示についても被写体所有権者が所有権に基づき決定することができると解するのが自然です。絵画を被写体とする写真に著作権が発生しないことも、上記事実に符合します。つまり、絵画所有権者は写真撮影者の権利に配慮することなく写真の使用収益権をもつのです。
5,慣行と契約
最高裁判決は、上告人主張の慣行を、「法的規範として是認することはできない」と示しました。慣行が法的に是認されないのは、その慣行が公序良俗に反する場合です(法令2、民92)。ところが、著作権のない(あるいは消滅した)物の写真撮影禁止や写真使用の制限は、当事者間の契約・合意により自由になしうることが肯定されています(文化庁編「著作権法入門」)。そうしますと著作権のない(または消滅した)絵画の写真使用を、被写体所有者が制限する行為は公序良俗に反しないこととなります(公序良俗に反する契約は無効とされる)。したがって、上告人主張の慣行は公序良俗に反しないこととなり、やはりこの最高裁判決は問題があるということになりそうです。
6,判決と解説との齟齬
当該判決では、「原作品の所有権者はその所有権に基づいて著作物の複製等を許諾する権利をも慣行として有するとするならば、著作権法が著作物の保護期間を定めた意義は全く没却されてしまうのであって、仮に右のような慣行があるとしても、これを所論のように法的規範として是認することはできない…」と示しており、これに対する清永解説が意味の異なったものであることは誰でもすぐ分かることです。そもそも、上記5のとおり上告人主張の慣行に違法性はないから、慣行を違法であるかのように示した当該判決は違法であることとなります。
7,結論
皆さんは著作権でのみ考えるようで、「物を見るのに対価の支払いが必要なのか」といったようなお粗末な主張も現れました(田村善之「著作権法概説」)。しかし、著作権だけが権利ではありません。古来、見世物の見料、ストリップ劇場の入場等、まさに見ることに対し料金が必要なのです。田村教授によれば、それはその土地・場所に立ち入る行為の対価とのことです。しかし芝居小屋に入っても何も見られないのなら誰もカネを払いません。もっとも、無料で見せるか、自由に見せるかは権利者が決めることです(例:富士山、花火大会の花火,外から見える建物の外観)。
妥当にして常識的解釈は前記のとおり、「絵画を被写体とする写真の使用権は、絵画所有権者に存する。」ということです。
また、絵画を被写体とした写真を絵画の複製物と考えるのは誤りです。版画の複製物とは版を起こして刷ったものであり、油絵の写真には原画にある絵具の隆起はありません。墨書の写真印刷物には墨が付着していません。
本問題は、写真術の発達により生じた誤解により起こったものと考えます。写真が発明されなかったら、絵画の複製物は存在しないか、という点からも、このことは明らかです。

eve********さん

編集あり2010/7/103:15:45

1,「法不遡及の原則」の意味を根本的に誤解しています。法の不遡及とは「法の適用は制定前に遡れない」という意味であって、「法制定前に作成された創作物に関する『法制定後の』法律関係」は遡及効の問題ではないのです。

2,「文芸作品はそれ自体が無体物であるが、美術品はそれ自体が有体物」という区別は事実に即していません。文芸作品にも「作者の生原稿」という有体物が立派に存在しますし、美術的価値の所在が実体を伴う有体物ではなく観念上の存在としての無体物にこそあるという事は、マルセル・デュシャンの代表作『泉』(1917年制作)で既に示されています(有体物としての『泉』は既製の工業製品であるただの小便器に過ぎない)。

3,物権法の基礎知識が抜け落ちています。物権(所有権など)の客体はあくまでも有体物であって、情報(無体物の一種)を客体とする無体財産権(著作権など)とは客体の違いで厳然と区別されます。写真に写っているのはあくまでも「視覚的情報」に過ぎないので所有権の客体とはなり得ません。

4,阿部評釈に「両権利の客体を混同」という誤りはありません。先にも述べましたが、所有権の対象はあくまでも有体物です。所有権の用益権能として行えるのはあくまでも「所有物自体を物理的に見せない」事までであって、所有物を離れて独り歩きをした視覚的情報に対し所有権の支配が及ぶ事はないのです。そして、入場料の徴収や写真撮影の許可は所有物の用益権能の範囲なので、清永調査官の解説とも矛盾しません。


>「美術の著作物=美術的価値」だとしたら絵画を買う際著作権も買わない限り美術的価値のない有体物だけしか得られないのですか?

それは黙示の意思表示の問題です。反対意思を明示しない限り著作権も従たる権利として絵画の処分に従うと解するのは当然の事です(民87条2項類推)が、当該判決の事例では「著作権自体が存在しない」ので移転させようがありません。

>古代・中世の【著作物】に著作権を付与する意味がありますか?

パブリックドメイン(公有)なので付与する必要などありません。著作権の消滅した(あるいは元々存在しない)創作的表現は人類の宝であり、それを具現化した有体物の所有者であっても無形の宝の独占は許さないとするのが著作権法の基本的立場です。

>絵画写真は絵画を元物とする果実と解することもできると愚考します。

著作権が存在する場合は複製権(著作権法21条)の問題です。パブリックドメインの絵画については複製権は否定されますし、絵画写真を絵画の果実と解したとしても、既に絵画と別の取引対象として独り歩きしているものを絵画の所有者が支配する事など許されません。民法の基本原則である「所有権絶対の原則」を端から無視していると言わざるを得ない愚論です。

>判決のおかしな部分を是正しているように読めます。

全く逆です。調査官が疑問ありとする慣行は上告理由を是とする方向に働くものであり、上告棄却判決と調査官の解説に齟齬はありません。

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