よく航空券よりも、ツアーパックの方が、安い場合がありますが、なぜなんでしょう...

・柔軟な運賃設定ができない
・値崩れ防止

この2つの理由です。

最近話題の海外のLCC（格安航空会社）の航空券は、便によって、また、予約するタイミングによって、運賃がコロコロ変わります。その変動幅は数倍どころか、場合によっては10倍以上に及ぶほどです。LCCは、売れ行きを予想し、それに応じて運賃を変える、つまり、満席になりそうな便は高く、空席ができそうな便は安く、それでも空席が埋まりそうになければ投げ売りを、という具合に、柔軟に売価を変えることで、なるべく満席で飛行機を飛ばそうとしています。
飛行機を飛ばす費用のほとんどは固定費ですから、空席は赤字しか生みません。売れそうにない座席は、投げ売りしてしまった方が、航空会社の収益は上がります。
しかし、日本では、規制によってこのような売り方ができませんでした。航空券はあらかじめ届け出た運賃表に基づいた値段で売らねばならず、空席が出ることが確実であっても、赤字が垂れ流されるのを指をくわえて見ているしかなかったのです。・・・というのは建前で、そうはいっていられない航空会社は、うまい抜け道を見つけ出します。それが、旅行会社のツアーを使うことです。
旅行会社のツアーに使われる航空券も、本来は、ツアー用航空券の運賃表に基づいた値段で旅行会社に卸さなければなりません。しかし、ツアーは、航空券とホテルとを「セットでいくら」という形で売られます。ツアー代金のうち、航空券がいくらであるのかは、表面的にはわかりません。ここに抜け道があったのです。航空会社が運賃表を無視した値段で旅行会社に航空券を卸したとしても、実際にいくらで卸したのかは、外部からはわかりません。往復のツアー用割引運賃よりも安い値段で売られているツアーが存在することから、運賃表を無視していることは明らかなのですが、航空会社が自由かつ柔軟に運賃を決められないことの方が不合理なのですから、誰もそれをとがめることはありませんでした。
こうやって、航空会社は、空席が出そうな便の航空券を、安い値段で旅行会社に卸し、収益の最大化を図っていたのです。

ツアーを安売りの抜け道にすることには、値崩れ防止の意味もあります。
ツアーがいくら安く売られていたとしても、それはあくまでツアーであって、航空券そのものの相場には直接影響を与えません。しかし、海外のLCCのように、航空会社が航空券のみを直接安売りした場合、その安売りした値段が相場を形成してしまいます。
よく、日本のマスコミは、「海外のLCCはこんなに安く乗れる」などといって、数百円の運賃の存在をセンセーショナルに紹介します。しかし、それはあくまで、常に変動するLCCの運賃の一部に過ぎません。しかし、安売りに慣れた消費者の頭の中には、安売りされた値段を基準とした相場観が形成されてしまいます。一度、数百円の運賃を見てしまうと、数千円の運賃すら高く感じてしまうことがよくあるのです。
日本の航空会社は、これを恐れていたのです。安売りによって空席を捌きたい、でも、その値段が相場を形成することは避けたい、という、矛盾した要求をまとめてかなえたのが、旅行会社のツアーというわけです。