学生時代に地理学を専攻していたものです。 まず、１の「地理がまなべる大学」ですが、以下のようなところが参考になるかと思います。 地理関連学会連合「関連リンク」 http://www.ajg.or.jp/union/linkj.html#Anchor_01 人文地理学会「地理学リンク集」 http://hgsj.org/manabu/link/ ベネッセ「マナビジョン」（学べる学問：人文科学→地理学で検索） http://manabi.benesse.ne.jp/daigaku/search/___L01-103_/1.html 他に「ナレッジステーション 日本の大学」でも検索できます（こちらは人文科学の人文地理と理学の自然地理とに分けられています）。 これらをもとに一覧を作ろうかと思ったのですが、諦めましたｗ。学会のリンク集で落ちているところもあるし（琉球大学 法文学部 人間科学科 地理歴史人類学専攻など）、ベネッセなどの民間のに落ちているのもあるし（私のいた岡山大学 文学部 行動科学専修コース 地理学教室）、学会のにも民間のにも落ちてるところもあるし（茨城大学 人文学部 社会科学科 地域研究･社会学コースなど）で、これをちゃんとチェックすると大変だぞ、と。 さて、その次にですが、 ２、入試の際に地理の中のコースを決めなくていい大学（できれば一年次には地理をまんべんなくやり） ３、地理も学べるけど人文系をまなべる大学 これは、実は相反する課題となります。 地理学の範囲を網羅している大学は限られ、揃っている大学では最初から地理学専攻の課程が企画されています。勿論大学の１～２年のうちに「一般教養」として、人文科学系の講義を受けねばならないハズです。その範囲では必須でやることになりますが、それ以上となると、自分の専攻の時間の合間に勝手に聴講したり独学したり、ということになります。 一方で、「地理も学べるけど人文系をまなべる」となると３年生とかで専攻やコースを選ぶような大学になると思います。そういう大学は多いのですが地理学のスタッフが１～３名程度に限られてしまい、地理の範囲を万遍なくというのは難しく、担当教授の専門分野にかなり限定した指導になり易いです。 なお、２の「地理の中のコース」を決めるというのは、基本的にありません。ただ、上記のとおりスタッフの少ない大学だと入った時から分野が限られてしまうという可能性があります。約四半世紀前ｗ、私が岡大文学部史学科地理学教室に入った当時、地理学研究室はバリバリの経済地理学一色で、「文学部」「史学科」に入ったハズなのに、通常の専門の勉強はまるで経済学部でしたｗ。 で、２・３も踏まえつつ ４、地理ができるおすすめの大学 ですが、 ・地理学のスタッフが多彩で専攻内にしっかり揃っている ・他の人文科学に関する講義なども聞けるよう総合大学として１キャンパスになってる という前提で考えてみます。 私の個人的見解では、イチオシは「筑波大学」かな。 １キャンパス内(広すぎますがｗ)に地理学関連のスタッフが多数揃っています。 ただ、地理学のある専攻というのが… ・人文･文化学群 人文学類 史学主専攻 歴史地理学コース ・人文･文化学群 比較文化学類 フィールド文化領域 文化地理学コース ・生命環境学群 地球学類 地球環境学主専攻 の３つあるんですよ（この他に教育学類にも地理の先生います）。 で、このうち筑波の地理の本丸は、地球学類のだと認識してます。 地球環境学主専攻では、人文地理･自然地理･地誌の地理学の根幹となる３分野のスタッフが揃っていて広く学べるチャンスがあります（まぁ地誌の担当といっても各々の系統地理学の専門も持っていますが）。研究も最先端です。 問題は、ここは理系。 となると、文系の人文学類と比較文化学類となりますが、どちらの学類も他の人文科学について広く学べそうです。あとは「私、地理学やるから地球学類のも顔出して来る！」というのが、どれだけできるのか。他学類の学生の出入りを嫌がる偏狭な先生はまさか少ないかと思いますが、制度的に時間が取れるのかどうか、その辺は大学に聞いてみてシラバスとか見てみないと何とも分からないですねぇ。 次に「京都大学」。文学部 行動文化学専攻 地理学研究室ですかね。 京大文学部も２年生になってから専攻を選ぶようですから、１年次に幅広く人文科学を学ぶことを求められます。 ただ、地理学を広く、かというと、そこは？？？です。京大地理は人文地理学の牙城です。自然地理学をどの程度学ぶかは、私は分かりません。 一方「東京大学」ですが、ここは何で入ればいいんだろ？ｗ。ただ、地理学なら３年次から教養学部 学際科学科 地理･空間コースの選択になるかと思います。ともかく１・２年次に関しては人文科学のみならず、自然科学･社会科学まで幅広く教養を身に着けることを求められます。地理に関しても幅広く学べそうですが、人文科学というよりは自然科学や空間システムみたいな感じが主なのかな？ 人文らしいかどうかは、もうちょっと内容をちゃんとみないといけないですね。 日本の地理学が、京都大学では文学部に、東京大学では理学部に、各々欧米より｢輸入｣されたという経緯から、関東のほうが地理学というと理系っぽい国立大学が多めです。 京大･東大とも第２のお勧めはあるんですけど、ちょっと難があるかな、と。 国公立では、教育学部には必ず地理学の先生がいますが、これだと人文学とも違いますしね。他の分野と混合して先生がある場合もありますが、それを除き、ある程度ちゃんと人文系学部の地理学教室としての組織と歴史がある大学としては、お茶の水女子大、金沢大、名古屋大、大阪大、大阪市立大、岡山大、広島大、九州大、熊本大といったところですね。 どれもそんなにスタッフが多い訳ではないので、上述した問題がありますが、岡山大のように学部に跨っていろんな先生がいる場合はあります。 相対的にスタッフの多いのが大阪市立大学。ただ、歴史学や民族学的なバリバリの人文、というよりは経済学･社会学等の社会科学的なアプローチの先生が多いかな。 名古屋大学も良いですね。岡本先生は行動地理学といって人間の空間認知と地理のような研究をされていて、質問主さんの関心にぴったりかな、と思いつつも、もうすぐ定年かな？ 定年後は南山大かなぁ？ そのあたり小規模な教室だと先生の異動でいろいろ影響があるんですよね。 戦前、東の東京文理科大学に対し、西にあったのが広島文理科大学。今の広島大学です。ですので、広島大学の文学部地理学教室も歴史と伝統のある研究室です。ただ、スタッフ数とかは東京文理科大、筑波大のようには大きくはありません。 上記したような各大学は、今はたいがい２年次から専攻を決めるようですね。 私立大学については、しっかりした地理学のスタッフ体制があると私が見るのは、明治大、法政大、日本大、駒澤大、専修大、立正大、立命館大ですね。これらはどこもお勧めしていいかなと思います。 私が修士の頃にいた立正大学は、身贔屓じゃないですけど、スタッフも体制も揃っており、私学随一の地理学科だと思っています。科研費なんかもかなり取ってますし、研究でも他大学に引けをとりません。 ただ、如何せん地理学科のある地球環境科学部のキャンパスが熊谷で、文学部が都内大崎のため、他の人文科学分野の講義は一般教養でしか学べないかな。あとは世間の知名度とかそういう点では有利じゃないところも、いろいろ残念だったりするのですが…（自分の出身校になってこと言うんだ！とお叱りが来そうですが(^^;;）。 他の私立も学科を超えての他の人文系の履修がどこまでできるかは、確認しないと分かりませんが、キャンパスとしては同一内だと認識しています。 早稲田大学では教育学部に地理学教室があるのですが、早大の教育は、どっちかというと教養学部的な面もあり、いろいろ人文系の勉強できるかなと思います。ただ、上記私大に比べるとやや規模が小さく、地理学としてカバーしてる範囲が狭いかな。 一方で、自分や自分の大学に専門の先生がいないなら(国公私問わず)、「紹介してあげるから、あの先生に指導を仰いでおいで」と言ってくれる先生も少なくありません（そうでない方もいますが）。そういう時には、大都市部の大学のほうが有利ですね。 地方国立大の小規模研究室は他学への紹介とかでも不利ですが、研究室は濃厚です。真摯に研究する学生も多いハズです(私を除く)。 最後に、５ですが、私が岡大に入った頃は、願書の時点で専攻の希望を出し、合格時点で所属研究室が決まる時代でしたので、入学後のコース選択はありませんでした。ですので、これには答えられないかな、と。 ただ、付記しておきたいのは、高校の地理とは大学の地理学とは随分違うということです。地理学は無茶苦茶簡単に言うと「どうしてこういう空間的纏まり(例：酪農地域)ができたのか？」｢この場所と場所の結びつきはどのように出来て(例：東京通勤圏)、どう機能しているか？｣といったことを地図に落としながら、時系列と多様な関連性を踏まえ解明する科学です。 どっかの地域を深く分析というのも地誌学としてあるんですが、そっち方面は最近、「地域研究(エリアスタディーズ)」として独立してきてます。そこでは社会学・人類学・民俗学などのそれぞれの学問の調査研究手法を軸にフィールドワークで分析する立場という感じです。京大や岡大の組織改編でもそういう分野が台頭してます。もし高校で地理Ｂへの関心が高くて「地理へ」とお考えなら、そういう地域研究の学部も当たられたほうがいいと思います。この面では一橋大学社会学部もお勧めです。 それと「地域再生」的な社会問題解決への研究というものあります。行政学的・福祉学的立場であり、鳥取大学 地域学部 地域政策学科などです。こういう面も含めるなら、地理に拘らず、視野を広げて検討する必要もあるかと思います。 以上、長文にて失礼しました。