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以下の問題を考えています。MgKα線(λ=9.8900Å)で得たXPS電子が1073.5eVの運動エネ...

星野カーピィさん

2016/12/1009:00:05

以下の問題を考えています。MgKα線(λ=9.8900Å)で得たXPS電子が1073.5eVの運動エネルギーを持っていたとする。分光器の仕事関数を14.7eVとしたとき以下の問いに答えよ。(a)放出された電子の結合エネルギーを計算せよ

(b)放出された電子は硫黄S(2s)からの電子とすると、その硫黄はS2-、S、SO3 2-、SO4 2-のいずれであるか。
(c)AlKα線(λ=8.3393Å)を励起光として用いた場合には運動エネルギーはいくらになるか。
(d)MgKα線で放出された電子がオージェ電子であった場合、AlKα線では運動エネルギーがいくらになるか。

以下は自分の考えです。
(a)E=hc/λよりMgKα線のエネルギーを求め、Eb(結合エネルギー)=hν(入射X線のエネルギー)-Ek(電子の運動エネルギー)-w(装置の仕事関数)に代入
(b)上の結果を写真の図に当てはめる
(c))E=hc/λよりAlKα線のエネルギーを求め、上の式にEb=(a)で求めた値、hν=AlKα線のエネルギー、w=問題文中の仕事関数、を代入してEkを計算

というように考えたのですが、この考えは合ってますか?また、(d)がどうしてもよく分かりません。どうか教えてください。

AlKα線,MgKα線,運動エネルギー,入射X線,結合エネルギー,内殻準位,分析器

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ベストアンサーに選ばれた回答

okw********さん

2016/12/1012:36:16

この質問はかなり前からあった気がしますが。

昔、XPSとAES(オージェ電子分光)を使った半導体界面の研究をやっていました。こんな専門的な課題があるのですか。

>(a)E=hc/λよりMgKα線のエネルギーを求め・・・
式としては合っていますが、なぜそうなるか分かりますか?

まず励起X線のエネルギーを計算します。プランク定数をh [Js]、真空中の光速を c [m/s]、電子電荷を q [C]、光の波長をλ[m]とすれば、光子エネルギーEp [eV]は
Ep = h*c/(q*λ)
なのでMgKα線ではEp = 1253.631925 eV となります。

一方、フェルミ準位を基準とした内殻準位の結合(束縛)エネルギーを Eb [eV]、その準位から飛び出した光電子の運動エネルギーをEks [eV]とすれば
Ep = Eb + φs + Eks --- (1)
となります。φsは試料の仕事関数 [eV] です。この関係は添付図の上半分の上側の図を見ると理解できると思います。

ちなみに真空準位というのは、そのエネルギーより小さいエネルギーを持った電子は試料にとどまり、それより大きいエネルギーを持った電子は試料の外部に飛び出すという境界のエネルギーです。つまり運動エネルギーというのは、真空準位から測った光電子(飛び出した電子)のエネルギーなります。したがって、内殻準位の結合エネルギーが大きいほど(添付図の「内殻準位」の位置が左側にあるほど)、光電子の運動エネルギーは小さくなります。EpとΦsが分かっていればEksを測定することでEbが分かるという原理です。

しかし、ここで注意しなければならないのは、試料から飛び出した光電子の運動エネルギーと、分析器に入った光電子の運動エネルギーは一般に異なるということです。それを示したのが添付図の上半分の下側の図です。通常、試料ホルダと分析器は電気的につながっているので、試料が帯電していなければ、試料と分析器のフェルミ準位は一致します。添付図ではフェルミ準位を表わす青い破線は試料側と分析器側で同じ直線になっていますが、そうなっていればフェルミ準位が一致していることになります。

分析器の仕事関数Φaは分析器の真空準位からフェルミ準位までのエネルギー差なので、Φa>Φsなら、分析器の真空準位のほうが高いエネルギー位置になります。分析器内部の光電子の運動エネルギーをEkaとすれば、添付図の下側の図から分かるように
Φs + Eks = φa + Eka --- (2)
という関係になります。

したがって式(1),(2)から
Eb = Ep - φa - Eka --- (3)
となります。この式にはΦsが入っていないので、試料の仕事関数が分からなくても、分析器の仕事関数Φaが分かっていれば、分析器内部の光電子の運動エネルギーEkaから結合エネルギーEbが計算できます。

問題(a)に書かれた「XPS電子が1073.5eVの運動エネルギー」といのがEkaのことであれば式(3)からEbを計算できます。Epは最初に計算したように、MgKαの場合は 1253.631925 eVです。φaが14.5eVというのは大きすぎる気がしますが、φa=14.5eVで計算するとEb = 165.4 eV となります。

>(b)上の結果を写真の図に当てはめる
Eb = 165.4 eVなのでグラフを見れば一目瞭然です。

>(c)E=hc/λよりAlKα線のエネルギーを求め・・・
それで合っています。式(3)から
Eka = Ep - φa - Eb
なので、AlKαの光子エネルギーEpを計算すれば分かるはずです(φaとEbはMgKαで計算したときと同じ値を使います)。

問題(d)は簡単です。励起X線源が何であってもオージェ電子の運動エネルギーは同じです。つまり運動エネルギーは1073.5eVです。この性質を利用して、観測された電子スペクトルが光電子なのかオージェ電子なのかを区別できます。X線源のエネルギーを変えても運動エネルギーが変わらないのがオージェ電子で、X線源のエネルギーを変えると運動エネルギーが変わる(結合エネルギーは変わらない)のが光電子です。

オージェ過程というのは、高いエネルギーを持った電子を試料に照射したときに、添付図の下半分に示したように、内殻準位2にあった電子が弾き飛ばされてできた空席に内殻準位1の電子が落ち込んで、その後、内殻準位1の別の電子が試料外部に出てくるという現象です。この場合、エネルギー保存則から、電子2が獲得したエネルギーと電子3が持っているエネルギーはどちらもEb2-Eb1になります。したがって、オージェ電子の運動エネルギーEksが分かればEb2-Eb1が分かるというものです(実際にはXPSのときと同様に分析器の仕事関数を考慮します)。

XPSスペクトルの中に混ざっているオージェ電子による信号は、高エネルギーの光電子が試料に再入射したときに発生したものです。この光電子はいろいろな準位から発生したのものなので、いろいろなエネルギーを持っています。X線源のエネルギーを変えると、その光電子のエネルギーも変わります。しかし、オージェ過程というのは光電子によって叩き出された電子の位置に空席ができてからの過程(どういうエネルギーの電子で叩き出されたかは無関係)なので、X線源のエネルギーを変えてもオージェ電子のエネルギーは同じです。

ちなみに、光電子によって叩き出された電子1はどこに行ったかというと、光電子のエネルギー>Eb2のときは試料外部に飛び出します。その電子を2次電子といいます。2次電子はいろいろな過程を通して出てくる電子なので、非常に多くの電子からなります。電子顕微鏡はこの2次電子の強度を測定しています。

この質問はかなり前からあった気がしますが。...

質問した人からのコメント

2016/12/11 10:15:52

非常に詳しい回答ですごく助かりました。
ありがとうございました。

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