入りません。
夫婦の財産関係は、特に夫婦財産契約を締結していない限り、法定財産制に従います(民法755条)。夫婦財産契約は、婚姻届を出す前に財産関係について契約を締結し、これを法務局に登記することを必要としますし、婚姻後の変更は原則として認められません。このような複雑さから現状ではほとんど利用されておらず、通常は法定財産制により財産関係が決まります。
法定財産制における夫婦の財産には共有財産と特有財産があります。共有財産とは、婚姻期間中に夫婦の協力によって取得し維持した財産をいいます。
特有財産とは、婚姻前から夫婦の一方が有していた財産あるいは、婚姻中でも夫婦の協力とは無関係に取得した財産をいいます。
離婚に伴う財産分与の対象となるのは共有財産のみです。
財産分与は、夫婦の共有財産を婚姻関係の解消にともない公平に分配するという清算的要素をその中核とするからです。
最判 昭和46年7月23日民集 第25巻5号805頁
「離婚における財産分与の制度は、夫婦が婚姻中に有していた実質上共同の財産を清算分配し、かつ、離婚後における一方の当事者の生計の維持をはかることを目的とするものであつて…」
親の遺産は通常は夫婦の協力とは無関係に取得した財産であるため、特有財産にあたります。
もっとも、特有財産とされるものでも、夫婦のもう一方の協力がなければこれを維持できなかった場合は財産分与の対象となりえます。
また、離婚後に相手が生活に困窮する場合には財産分与に扶養的要素が含まれることになり、特有財産からも相手に与える必要が生じる可能性もあります。