生物の進化は,絶滅する種もあれば,新しく進化してくる種もある.絶滅は常に起こっている自然現象だから,私たちは何もすべきではないと考えている人もいるかもしれませんし,あなたのように,種の保存になぜ躍起になるかがわからないという人もいるでしょう.科学的に考えてみましょう.
恐竜が絶滅をしたという話はお聞きになっておられるか,と思いますが,恐竜類が絶滅をしたような大量絶滅期ではない,「平常時」の生物種の絶滅数はどのくらいなのでしょう.
100万種の生物がいたとき,種の寿命が100万年として,1年に1種絶滅することを1とする指標E/MSY値というのがあります.種の寿命が100万年というのは,化石の研究から見積もられている値で,研究者の間で現在,受け入れらている値です.1年に1種絶滅なら,100万年では100万種絶滅で0になる,よって,種の寿命が100万年ということです.
この話は,100万種いる生物が1年に1種づつ絶滅するということだから,たいした問題でもないだろう,と思うかもしれません.
ほ乳類や鳥類は,100万種もいないので,ほ乳類や鳥類にみあう数値として,1万種の生物で考えましょう.
1万種の生物がいるとすると,1万種絶滅で0になるのは,100年に1種絶滅,100年×100年=1万年で100種絶滅,100万年で1万種絶滅で0ということです.よって,種の寿命が100万年ということになります.
なお,ほ乳類と鳥類のE/MSY値については,1より多く見積もって2というのが研究者の間で採用されている数値です.
ですから,ほ乳類(6,299種),鳥類(18,043種)では,100年に2種絶滅ということになるので,この率を採用すると,400年で8種の絶滅ですが,1600–2010年の410年間で,ほ乳類79種,鳥類134種も絶滅しているのです.つまり,「平常時」の絶滅数をはるかに超える率で絶滅している,ということが理解できます.マスコミ等は,これを第6の絶滅期などと呼んでいるのですが,その原因は,人類の経済活動にあるのは確かです.よって,人類が手立てを打つべきなのではないでしょうか.
例えば,年間に世界のクモが食べる虫の量は全人類の体重に匹敵します.日本のクモは,現在約1700種が記録されており,世界のクモは,約4万8000種です.毒を持つとか,毛むくじゃらで気味が悪いなどと言われる嫌われ者の
クモですが,もしクモがいなかったら,生態系の姿は大きく変わり,私たちに深刻な影響を及ぼすことでしょう.なぜなら,クモは,バッタなどの草食動物を食べ,鳥やカエルなどに食べられるというように,食物連鎖の中間に位置し,陸上生態系で最も量が多い肉食動物,捕食者だからです.クモを例に挙げましたが,全ての生物は,食物連鎖に係りますので,ある種の生物の絶滅は,生態系に大きな影響を及ぼします.それは,単に,希少種にとどまらず,ごく普通の生物種であってもです.