まず、「得心が行かぬ」というのは、納得できない、という意味であることはご理解でしょうか?
この文について、「我ら」と「お前」の物理的位置関係がわからないので、なぜ話者が「得心が行かぬ」と言ったのかはわからないのですが、
「我らがここへ着いて半刻もせぬうちにお前は来た」と述べていることからすると、半刻(1時間)もしないうちに「お前」がここに来たことが納得できない、と言っているのですから、お前が1時間以内にここに着けるはずがない、と思っているわけです。この場合の「お前」が置かれていた状況は、「ここ」からおよそ1時間ではたどり着けない場所にいたか、「我ら」がいる「ここ」を1時間で探し出すことが困難な状況に置かれていたかのどちらかでしょう。
さらに、「谷底から大の大人を担ぎ、シシ神の森を抜けて」と言っているのですから、シシ神の森という、具体的にはどういう場所かわかりませんが、おそらく通過するのが困難な場所を通らなければならない場所に、「お前」はいた、そして、ここに着いた時には、おそらく谷底に倒れていたであろう「大の大人」を担いできた、ということも述べています。
これは、前の「得心が行かぬ」つまり、「お前」が1時間でここに着けるはずがないという判断を、この話者が述べたことをさらに補強する客観的事実となっています。
全体として言えば、谷底から大の大人をを担ぎ、シシ神の森を抜けた上で、「我ら」がここに着いて1時間以内に、「お前」が「ここ」にたどり着けるはずはない、という驚き、あるいは、不審感を述べていることとなります。