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ディーゼルエンジンでコモンレール方式を使うのは,下記のためです。 ●目的 ・排ガスのクリーン化 ・騒音・振動の低減 ・出力の向上 ●コモンレール方式とは 従来の方式(ジャーク式)では,燃料噴射の圧力が低く(200気圧程度),燃料の粒径が大きく,燃焼状態についていえば,下記の問題点がありました。 ・燃料粒径が大きい ・燃焼室内(筒内)で空気との混合が進まない ・筒内圧力が急激に上昇する ●どうしてクリーンになるか ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるスス(PM)は,燃料の粒子が空気(酸素)と十分,混合できず,部分的に不完全燃焼をおこすことで発生します。このため高圧で燃料噴射すると,より小さなインジェクタ穴径を使うことができ,燃料粒径を小さくできます。粒径が小さいと,酸素との混合が進み,より完全燃焼に近づきます。つまりHC(炭化水素)やCO(一酸化炭素)を低減できます。 高圧で噴射すると,短時間に多くの燃料量を噴射できるので,1回の燃焼において,数回にわけて噴射することが可能になります。実際,コモンレールでは,2回から9回にわけて噴射します。実用上,4回から5回が使われます。 まず「燃えやすい雰囲気」をつくり、「タネ火」をおこしてゆっくり燃やし、「燃えかすをキレイに除去」し、さらに排気触媒温度が低いときは、もう一度、噴射するという仕組みになっています。 ゆっくり燃やすことで,瞬間的な温度上昇を防ぐことができます。筒内温度が800℃をこえると急激にNOx(窒素酸化物)が発生するので,ゆっくり燃やして温度をさげるのは非常に重要です。 ●どうして静かになるか 噴射回数を数回にわけることで,圧力ピークを下げることができます。これにより振動・騒音を低減できます。 ●どうして出力向上できるか 完全燃焼できると,発熱量が増えるので,出力も向上できます。 ●問題はないか コモンレール方式により、排気は劇的にクリーンになると同時に振動・騒音も大幅に改善されました。しかし残る課題もあります(コスト以外に)。 ●最後の課題は、「ナノ粒子」 非常にむずかしい問題が発生してきました。それが「ナノ粒子」です。じつは従来から、「PM2.5」といわれる2.5μm(ミクロン)以下の微少な物質が、喘息(ぜんそく)などの原因物質のひとつといわれてきました。「ナノ粒子」はさらに小さいレベルで、50ナノメートル(0.05ミクロン)以下の本当に小さい物質です。 ガソリンエンジンの排ガスからもナノ粒子は出ますが,その量はディーゼルの1/100レベルです。つまりディーゼルエンジンの方が,より小さいPMが出るわけです。 ●有害な「ナノ粒子」 「ナノ粒子」程度の大きさになると、たとえば肺の細胞を簡単に通過してしまいます。じつは従来から、ナノレベルの微粉塵は大気中にあり、有害ではありませんでした。しかしディーゼル排ガスに含まれる「ナノ粒子」は有害の可能性が高いのです。つまり有害物質が体内に取り込まれてしまうわけです。 ●皮肉な「コモンレール」 均質な混合気形成には、コモンレール式による燃料の微細化が必要でした。しかしこの微細な燃料により、「PM2.5」や「ナノ粒子」が発生しているといわれています。なんとも皮肉な運命です。 簡単ですが、ご参考になれば幸いです。
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質問者からのお礼コメント
参考になりました。
お礼日時:2009/5/16 1:10