「単細胞生物の細胞分裂的にモノが増え続けたら、最後どうなるんだろう」という思考実験に基づくSFホラーを、栗まんじゅうで地球が滅びるかもというバカバカしさを交えて面白おかしく仕立てた作品ですから…「どんどん増え続けたらどうなるの？」が肝であり、安全制御なんてありません。ないことに意味があるのではないでしょうか。 回避方法は色々あると思います。 明らかに細胞分裂を意識した増え方をし、食べたらそれ以上は増えないことから、栗まんじゅうは、無生物でありながら、生物のように振る舞っています。細胞膜が破れて内容物が流出すれば細胞が死ぬように、皮が破壊され、内容物あんこが大きく欠損すれば、生物栗まんじゅうが死を迎え、増殖が止まる可能性は高そうです。なので、踏んづけて潰してしまう、半分に割ってしまう、などの手段で、簡単に止められたのかもしれませんね。もっとも、そもそも無生物の栗まんじゅうの生物死がどのように定義されるのか、まじめに考えると、なかなか難しいです。 読者がああすれば良いじゃないか、こうすれば良いじゃないかとアレコレ想像して、ドラえもんやのび太はバカだなぁと笑うところも含めての作品である気がします。解決策をあえて提示せず、子供達が思考する余地をあえて残した点が、素晴らしいと思いますよ。いや、子供どころか、大人も真剣に考察できちゃうわけですから。バイバインのお話が描かれてからもうすぐ半世紀経とうかというのに。藤子不二雄さんの狙い通りじゃないでしょうか。