証券会社は「直接金融」という働きをします。「直接金融」の対義語は「間接金融」で、間接金融の担い手は銀行です。まずは直接金融と間接金融の違いについて軽くご説明し、次に証券会社の存在意義を述べます。 直接金融と間接金融の違いは、《お金を貸す人が、お金を借りる人に、直接貸すのか間接的に貸すのか》です。例えば、質問者さんがトヨタ自動車の株を買って投資したとしましょう。質問者さんがトヨタ自動車の株を買うことは、トヨタ自動車に直接お金を貸したことと同じです。このように、お金を貸す人とお金を借りる人の間に何も挟まないのが直接金融です。 一方で、質問者さんが三井住友銀行にお金を預けたとします。次に、質問者さんが預けてくれたお金を使って、三井住友銀行がトヨタ自動車にお金を貸したとします。質問者さんは三井住友銀行にお金を貸しただけのつもりですが、最終的にはトヨタ自動車までお金が流れています。このように、お金を貸した人とお金を借りる人の間に銀行を挟むのが間接金融です。 さて、証券会社の働きを説明する前に、投資について少し補足します。質問者さんは投資についてどのようなイメージをお持ちでしょうか。質問文を拝読すると、「パソコン画面と睨めっこ」してギャンブルのようなことをしているイメージをお持ちかもしれませんね。確かにそのような人もいますが、実際の投資家の多くはプロの投資会社です。プロの投資会社は人からお金を預かり、預かったお金を増やす仕事をしています。 ここからが大切なのですが、プロの投資会社にお金を預けているのは、私たち国民全員です。どういうことかご説明します。私たちは成人すると会社で働きます。働いて稼いだお金の一部は、老後の暮らしに備えて、年金として国に納めます。集められた年金は、国がプロの投資会社に預け、それを増やしてもらいます。私たちは70歳くらいになると、プロの投資会社が増やしてくれていたお金を、年金としてもらうのです。あくまでも投資会社は増やしただけであり、もともとは私たちが稼いだお金ですよね。なので、私たち国民全員は、プロの投資会社にお金を預けていると言えるのです。 では、いよいよ本題に入りましょう。証券会社は何をしていて、なぜ必要なのでしょうか。まず、証券会社の最も大切な働きの1つは、《お金が必要な優良企業と、お金を増やしたいプロの投資会社を結び付ける》ことです。そして、証券会社の存在理由は、証券会社のおかげで優良な企業がお金を得て成長でき、さらに年金も増えるからです。 順を追ってご説明します。まず、とても画期的な技術を持つIT企業があったとしましょう。ここではミラクル社と名付けます。ミラクル社の開発チームは抜群の技術を駆使して、優れたアプリを作っていますが、まだ生まれたばかりなので赤字です。今後、さらにアプリを開発していくためにお金が必要です。もう少しお金があれば、数年後には黒字になりそうです。ふつうであれば銀行からお金を借りますが、銀行は赤字の企業にお金を貸すことはできません。国際的な法律で、銀行は非常に厳しい制限を受けているためです。 次に、年金の運用を任されているプロの投資会社がいたとしましょう。ここでは日興アセットマネジメントという会社を例に出します。今後、少子高齢化が進むので、より多くの年金が必要です。今のうちにお金を増やしておかなくてはいけません。銀行に預けても良いのですが、銀行は金利がほぼ0％なので、お金を増やすには全く使えません。どこかの会社の株に投資して、お金を増やしたいと考えています。 ここで登場するのが証券会社です。証券会社は、普段から色々な会社と話し合いをして、会社と一緒に投資してくれそうな投資家を探しています。その一方で、プロの投資会社とも日々話し合って、預かっている年金を増やすための戦略を考えています。そろそろお分かりでしょうか。今回のようなパターンでは、証券会社が日興アセットマネジメントにミラクル社を紹介し、投資してみないかと誘います。ミラクル社は赤字なため、銀行からはお金を借りられませんでした。日興アセットマネジメントは銀行ではなく投資会社なのでお金を貸せます。ミラクル社は無事、日興アセットマネジメントに投資してもらい、人々の役に立つすばらしいアプリを開発させました。 今回の投資はミラクル社だけでなく、日興アセットマネジメントにも利点があります。ミラクル社は最初の数年は赤字でしたが、4年目に黒字になり、ぐんぐん収益を伸ばしました。ミラクル社の株価は10倍になり、日興アセットマネジメントは年金を増やすことができました。もし年金を銀行に預けていたら、何万年経っても10倍にはできません。 このように、直接金融を担い、お金を貸す人とお金を借りる人の間に何も挟まないタイプのサービスを提供するのが証券会社です。証券会社の存在により、規模が小さい会社は大きく成長でき、社会にも良い影響が及ぼされるのです。 今回の説明はかなりデフォルメされており、実際の業務と異なる点が多くあります。しかし、全体的なイメージは大きく外れていません。証券会社が提供する直接金融によって、社会全体が豊かになることを分かって頂けたら幸いです。投資や証券会社というと、「ギャンブル」や「トレーダー」といった偏ったイメージが生まれがちですが、ぜひ色々と新聞・ニュースをご覧になって、金融の面白さを味わってみて下さいね。 ============================= 以下、参考になるWebページです。よろしければどうぞ。 “トーク”で学ぼう金融基礎のキソ 【第１話】間接金融って何？ https://job.career-tasu.jp/finance/guide/financial_basics/001/#start 【第２話】直接金融って何？ https://job.career-tasu.jp/finance/guide/financial_basics/002/#start