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複雑に絡み合うパラレルワールドの物語です。 乙野四万字「僕が愛したすべての君へ」 並行世界というほんの少しだけ違う可能性の世界。 その並行世界への移行(パラレル・シフト)は人間が無意識に、日常的に行っている行為だと立証されて数十年。 虚質科学の進展により、物質空間に干渉する虚質粒子の『虚質数(Imaginary Elements Print)』の差異を測定する方法が発見された。 人々は手首のウェアラブル端末で、自分がどの世界に居るのか、IPアドレスで確認できるようになった。 コンマで2つに区切られた6桁の数字の整数部分が「000」ならば基準世界だ。 高崎暦は両親が離婚するとき、母親の方へ付いていった。科学者である父親の研究を邪魔しないためだ。 10歳の暦が突然シフトした、亡くなった祖父がまだ生きている世界。飼っている犬のユノが死んでしまった世界。 同じ時間のどこかの並行世界。 一番近い世界は朝食がパンだったか米だっだかくらいの違いしかない。 だが遠くの並行世界にシフトすると、そこはまるで異世界だろう。 それが暦が初めてパラレル・シフトを自覚した体験だった。 乙野四万字「君を愛したひとりの僕へ」 並行世界というほんの少しだけ違う可能性の世界。 グラスの底から湧き上がる泡のように、浮上しながら大きくなり、二つに割れてまた浮上していく。 分裂した二つの泡は、異なる軌跡を描く。 日高暦は両親が離婚するとき、父親の方へ付いていった。旧姓の高崎に戻った母親の再婚の邪魔したくなかったからだ。 もう歳も40近くになってから、この『ギネス・カスケード』という現象を知った。 泡が浮き上がるとき、その粘性はビール自体を押し上げるが、グラスの内表面ではビールは下降に転ずる。 そしてビールの粘性により泡が一緒に下降するのである。 沈んでいく“泡”。 それがヒントだった。 10歳の暦が突然シフトしたのは、死んでしまった犬のユノが生きている世界、生きていた祖父が亡くなった世界。 果たして1つでもずれた並行世界の人間は、基準世界の人間と同一人物なのだろうか。 高校での同級生であった瀧川和音。 「虚質科学」研究所の所長の娘、佐藤栞。 暦にとって重要なのはどちらだったのだろう。 という恋愛パラレルSFストーリーです。
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