枝分かれするきっかけは、重ね合わせの状態が発生した瞬間、です。
シュレーディンガーの猫ならば、猫を入れた箱のフタを閉じたすぐ後から枝分かれが始まります。
質問者さんの表現に合わせると、以下のようになります。
フタを閉じる直前までは、「原子が放射線を放出していない」ことを観測済みなので、100%の確率で猫が生きています。
重ね合わせの状態が発生していませんので、世界の分岐は起きていません。
ところが、フタを閉じでから0.00001秒後には、原子が放射線を放出した可能性が0.00001%、放出していない可能性が99.99999%の重ね合わせの状態になります。
0.00002秒後には、原子が放射線を放出した可能性が0.00002%、放出していない可能性が99.99998%、
0.00003秒後には、原子が放射線を放出した可能性が0.00003%、放出していない可能性が99.99997%、
と、重ね合わせの状態はどんどん変化していきますが、重ね合わせの状態になっている、ということが枝分かれの要因になります。
もしも、フタを閉じでから0.00001秒後に開けたのであれば、世界は1,000万個に分岐し、そのうちの一個だけが猫が死んだ世界になり、9,999,999個の世界で猫が生きている、となります。
シュレーディンガーの猫では、話を分かりやすくするために、原子が放射線を放出した可能性と放出していない可能性が、それぞれ50%となった瞬間にフタを開ける、としています。
これならば世界は2個に分岐し、猫が生きている世界と死んでいる世界が一個ずつになります。
質問者さんが例にあげた「右手を顔の方に持っていく動作」では、動作全てが観測済み、と考えられます。
そのため、重ね合わせの状態になっていません。
よって、「右手を顔の方に持っていく動作」では、世界が枝分かれするようなことは発生しません。
「人間のスケールで枝分かれしているように感じられる」とおっしゃっておりますが、それは当然です。
多世界解釈での「観測」が、「人間のスケール」で行われている以上、そうなるのは必然なのです。
もちろん、多世界解釈は人間本位となる解釈を避けようと試みています。
シュレーディンガーの猫ならば、フタを閉じた瞬間に、世界は2「種類」に分岐する、とします。
2「個」ではありません。
放射線が放出した/放出されていない、は、2「種類」の事象であるため、世界が2「種類」に分岐する、としたことを人間本位と思う人はいないでしょう。
しかし、最終的に何個に分岐するのかは、人間がどの瞬間にフタを開けるかに依存してしまいます。
ここに、「人間のスケールで枝分かれしているように感じられる」原因があります。