「ギリシャの悲劇」か、「アイルランドの悲劇」のどちらかが起きるでしょう。
●ギリシャ:
ギリシャの主要産業は農業と観光業です。EUに加盟する前のギリシャは、国内景気が悪くなれば、為替が「自国通貨(ギリシャクローネ)安」になって、農業生産品の輸出価格が値下がりしました。それのよって、農業は景気が良くなったわけです。また、通貨安によって、外国人からするとギリシャのホテルの宿泊費が割安になるので、国外からギリシャを訪れる観光客が増えました。つまり、自国通貨が安くなると、主要産業の農業と観光業は、かえって有利になったわけです。
それによって、ギリシャの国内経済は順調に回復していました。
ところが、EUに加盟して以降のギリシャは、国内景気が落ち込んでも、農産品の輸出価格はユーロ建ての価格なので、ちっとも割安にはなりません。
ホテルの宿泊費も、これと同じことが言えます。
ギリシャ国内の景気が悪くなっても、国外のユーロ圏の人から見たら、ユーロ建て価格の宿泊費で変化がないので、割安感など何もありません。
結局のところ、ギリシャ国内の景気が悪くなっても、農産品の輸出が増えるわけでもなく、観光客が増えるわけでもない、となってしまいました。
つまり、ギリシャは、EUに加盟したために、「良いことはほとんどなかった」が、「為替によって国内景気のバランスを調整する」という大切な手段を失ったわけです。
●アイルランド:
EUに加盟する前のアイルランドは、小国ながら、「経済はヨーロッパ圏で最良の優等生」とみなされていました。当時、EU加盟国の中で最良と認められていたドイツよりも評価が高かったのです。
ところが、EUに加盟して以降のアイルランドは、国内景気が過熱しているのに、EU全体の都合で「景気刺激策」を取らされ、逆に、国内で景気刺激策を取りたいときに、EU諸国に歩調を合わせて「金融引き締め」をやらさてしまいました。
その結果、EU加盟前は「経済の超優等生」だった国が、加盟10年後には、「EU内のお荷物」とまで呼ばれるほど落ちぶれてしまったのです。
もし、日本が通貨をドルに統一すれば、日本国内の景気などまったくおかまいなしに、米国内の都合で公定金利を決められてしまい、国内経済がメチャメチャになってしまうおそれがあります。