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安部公房の棒の本文をのっけてください!

ker********さん

2011/5/2909:54:55

安部公房の棒の本文をのっけてください!

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aki********さん

編集あり2011/5/3117:29:25

むし暑い、ある六月の日曜日……
私は、人込みに埋まった駅前のデパートの屋上で、二人の子供の守をしながら、雨上がりの、腫れぼったくむくんだような街を見下ろしていた。
ちょうど人が立ち去ったばかりの、通風筒と階段の間の一人用の垓間を見つけ、すばやく割り込んで子供たちを順に抱き上げてやったりしているうちに、子供たちはすぐ飽きてしまって、今度は自分が夢中になっていた。しかし、特別なことではなかったと思う。実際、手すりにへばりついているのは、子供より大人が多い。子供たちはたいていすぐ飽きてしまって、帰ろうとせがみ出すのに、仕事を邪魔されでもしたように叱りつけて、うっとりとまた手すりの腕に顎をのっけるのは大人たちなのである。
むろん、少々、後ろめたい楽しみかもしれない。だからといって、ことさら、問題にするほどのことだろうか。私はただぼんやりしていただけである。少なくも、後になって思い出す必要に迫られるようなことは、何も考えていなかったはずだ。ただ、湿っぽい空気のせいか、私は妙にいらだたしく、子供たちに対して腹を立てていた。
上の子供が、怒ったような声で、「父ちゃん。」と叫んだ。私は思わず、その声から逃れるように、ぐっと上半身をのりだしていた。といっても、ほんの気分上のことで、危険なほどだったとは思えない。ところが、ふわりと体が宙に浮き、「父ちゃん。」という叫び声を聞きながら、私は墜落し始めた。
落ちるときそうなったのか、そうなって落ちたのかは、はっきりしないが、気がつくと私は一本の棒になっていた。太からず、細からず、ちょうど手ごろな、一メートルほどの真っすぐな棒切れだ。「父ちゃん。」と二度目の叫び声がした。下の歩道の雑踏がさっと動いて割れ目ができた。私はその割れ目めがけて、くるくる回りながら、真っしぐらに落ちていき、乾いた鋭い音を立てて跳ね返り、並木に当たって、歩道と車道の間の溝のくぼみに突き刺さった。
やっと一人の学生が私に気づいた。その学生は三人連れで、連れの一人は同じ制服の学生、今一人は彼らの先生らしかった。学生たちは、背丈から、顔つきから、帽子のかぶり方まで、まるで双子のように似通っていた。先生は白い鼻ひげを蓄え、度の強い眼鏡をかけた、いかにももの静かな長身の紳士だった。
初めの学生が私を引き抜きながら、何か残念そうな口調で言った。「こんなものでも、当たりどころが悪けりゃ、けっこう死にますね。」
「貸してごらん。」と言って先生は微笑んだ。学生から私を受け取り、二、三度振ってみて、「思ったよりも軽いね。しかし、欲張ることはない。これでも、君たちには、けっこういい研究材料だ。最初の実習としてはおあつらえ向きかもしれない。この棒から、どんなことがわかるか、一つみんなで考えてみることにしようじゃないか。」
先生が私をついて歩き出し、二人の学生が後に続いた。三人は雑踏を避けて、駅前の広場に出、ベンチを探したがどれもふさがっているので、緑地帯の縁に並んで腰を下ろした。先生は私を両手にささげて持ち、目を細めて光に透かすようにした。すると、私は妙なことに気づいた。同時に学生たちも気づいたとみえて、ほとんど同時に口を切った。「先生、ひげが……」どうやらそのひげはつけひげだったらしい。左端がはがれて、風でぶるぶる震えていた。先生は静かにうなずき、指先につけた唾で湿して押さえつけ、何事もなかったように両側の学生を顧みて言った。
「さあ、この棒から、どんなことが想像できるだろうね。まず分析し、判断し、それから処罰の方法を決めてごらん。」
まず右側の学生が私を受け取って、いろいろな角度から眺め回した。「最初に気づくことはこの棒に上下の区別があるということです。」筒にした手の中に私を滑らせながら、「上のほうはかなり手垢がしみ込んでいます。下の部分は相当にすり減っています。これは、この棒が、ただ道端に捨てられていたものではなく、何か一定の目的のために、人に使われていたということを意味すると思います。しかし、この棒は、かなり乱暴な扱いを受けていたようだ。一面に傷だらけです。しかも捨てられずに使い続けられたというのは、おそらくこの棒が、生前、誠実で単純な心を持っていたためではないでしょうか。」
「君の言うことは正しい。しかし、幾分、感傷的になりすぎているようだね。」と先生が微笑を含んだ声で言った。
すると、その言葉にこたえようとしたためか、ほとんど厳しいと言ってもよい調子で、左側の学生が言った。「ぼくは、この棒は、ぜんぜん無能だったのだろうと思います。だって、あまり単純すぎるじゃありませんか。ただの棒なんて、人間の道具にしちゃ、下等すぎますよ。棒なら、猿にだって使えるんです。」
(全部は入り切りません。一部省略しました。後半に続く。なおakiyanotoakiyanotoは私の別HNです。)

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aki********さん

編集あり2011/5/3117:31:47

全文は入りきらないので後半です。なお著作権が問われるとしたら回答者ではなくヤフーでしょう。
「でも、逆に言えば。」と右側の学生が言い返した。「棒はあらゆる道具の根本だとも言えるんじゃないでしょうか。それに、特殊化していないだけに、用途も広いのです。盲人を導くこともできれば、犬をならすこともでき、テコにして重いものを動かすこともできれば、敵を打つこともできる。」「棒が盲人を導くんだって? ぼくはそんな意見に賛成することはできません。盲人は棒に導かれているわけではなく、棒を利用して、自分で自分を導くのだと思います。」「それが、誠実ということではないでしょうか。」「そうかもしれない。しかし、この棒で先生がぼくを打つこともできれば、ぼくが先生を打つこともできる。」 ついに先生が笑い出してしまった。「瓜二つの君たちが言い合っているのを見るのは、実に愉快だ。しかし、君たちは、同じことを違った表現で言っているのにすぎないのさ。君たちの言っていることを要約すれば、つまりこの男は棒だったということになる。そして、それが、この男に関しての必要にして十分な解答なのだ……すなわち、この棒は、棒であった。」「でも。」と右側の学生が未練がましく、「棒であり得たという、特徴は認めてやらなければならないのではないでしょうか。ぼくは、標本室で、ずいぶんいろんな人間を見ましたけど、棒はまだ一度も見たことがありません。こういう単純な誠実さは、やはり珍しい……」 「いや、我々の標本室にないからといって、珍しいとは限るまい。」と先生が答えた。「逆に平凡すぎる場合だってあるのさ。つまり、あまりありふれているので、とくに取り上げて研究する必要を認めないこともある。」学生たちは、思わず、申し合わせたように顔を上げて周囲の雑踏を見回した。先生が笑って言った。「いや、この人たちが全部、棒になるというわけではない。棒がありふれているというのは、量的な意味よりも、むしろ質的な意味で言っているのだ。数学者たちが、もう、三角形の性質をとやかく言わないのと同じことさ。つまり、そこからはもう新しい発見は何もあり得ない。」ちょっと間をおいて、「ところで、君たちは、どういう刑を言い渡すつもりかな?」「こんな棒にまで、罰を加えなけりゃならないんでしょうか。」と右側の学生が困ったように尋ねた。 「君はどう思う?」と先生が左側の学生を振り返る。 「当然罰しなければなりません。死者を罰するということで、ぼくらの存在理由が成り立っているのです。ぼくらがいる以上、罰しないわけにはいきません。」 「さて、それでは、どういう刑罰が適当だろうかな?」二人の学生は、それぞれ、じっと考え込んでしまった。先生は、私を取って、地面に何かいたずら書きを始める。抽象的な意味のない図形だったが、そのうち、手足が生えて、怪物の姿になった。次に、その絵を消し始めた。消し終わって、立ち上がり、ずっと遠くを見るような表情で、つぶやくように言った。 「君たちも、もう、十分考えただろう。この答えは、やさしすぎてむつかしい。講義のときに習った覚えがあるだろうと思うが……裁かないことによって、裁かれる連中……」 「覚えています。」と学生たちが口をそろえて言った。「地上の法廷は、人類の何パーセントかを裁けばいい。しかし、我々は、不死の人間が現れでもしない限りこのすべてを裁かなければならないのです。ところが、人間の数に比べて、我々の数はきわめて少ない。もし、全部の死人を、同じように裁かなければならなくなったりしたら、我々は過労のために消滅せざるを得ないでしょう。幸い、こうした、裁かぬことによって裁いたことになる、好都合な連中がいてくれて……」「この棒などが、その代表的な例なのだ。」先生は微笑して、私から手を離した。私は倒れて、転げ出した。先生が靴先で受け止めて、「だからこうして、置きざりにするのが、一番の罰なのさ。だれかが拾って、生前と全く同じように、棒としていろいろに使ってくれることだろう。」学生の一人が、ふと思い出したように、「この棒は、ぼくらの言うことを聞いて、何か思ったでしょうか?」 先生は、慈しむように学生の顔を見つめ、しかし何も言わずに、二人を促して歩き始めた。学生たちは、やはり気がかりらしく、幾度か私のほうを振り向いていたが、間もなく人波にのまれて見えなくなってしまった。だれかが私を踏んづけた。雨にぬれて、やわらかくなった地面の中に、私は半分ほどめり込んだ。「父ちゃん、父ちゃん、父ちゃん……」という叫び声が聞こえた。私の子供たちのようでもあったし、違うようでもあった。この雑踏の中の、何千という子供たちの中には、父親の名を叫んで呼ばなければならない子供がほかに何人いたって不思議ではない。

nag********さん

2011/5/3008:59:03

僕のお父さんは男です。

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