(1) k個のベクトルa[1], ..., a[k]が線形独立で、k+1個のベクトルa[1], ..., a[k], a[k+1]が線形従属ならば、a[k+1]はa[1], ..., a[k]の線形結合で表わされる
(証明)
a[1], ..., a[k], a[k+1]が線形従属だから
α[1]a[1]+...+α[k]a[k]+α[k+1]a[k+1]=0, (α[1], ..., α[k], α[k+1])≠(0, ..., 0, 0)を満たすスカラーα[1], ...., α[k], α[k+1]が存在します。
ここで、α[k+1]=0と仮定すると
α[1]a[1]+...+α[k]a[k]=0となり、a[1], ..., a[k]は線形独立だから
α[1]=...=α[k]=0
よって、α[1]=...=α[k]=α[k+1]=0となってしまい、(α[1], ..., α[k], α[k+1])≠(0, ..., 0, 0)であることと矛盾します。
したがって、α[k+1]≠0
よって、a[k+1]=(-α[1]/α[k+1])a[1]+...+(-α[k]/α[k+1])a[k]
以上から、a[k+1]はa[1], ..., a[k]の線形結合で表わされます。
(証明終わり)
(2) 固有値q[1], q[2]がq[1]≠q[2]ならば、それに対応する固有ベクトルx[1], x[2]は線形独立である。
(証明)
q[1], q[2]が線形変換Aの異なる固有値とし、それに対応する固有ベクトルをx[1], x[2]とします。
α[1], α[2]がスカラーで
α[1]x[1]+α[2]x[2]=0 ………………(式2-1)
を満たすものとすると
0=A(α[1]x[1]+α[2]x[2])=α[1]Ax[1]+α[2]Ax[2]=α[1]q[1]x[1]+α[2]q[2]x[2]
すなわち、
α[1]q[1]x[1]+α[2]q[2]x[2]=0 ……(式2-2)
(式2-1)×q[2]-(式2-2)を計算すると
α[1](q[2]-q[1])x[1]=0
そして、q[2]-q[1]≠0, x[1]≠0だから
よって、α[1]=0
同様に、(式2-1)×q[1]-(式2-2)を計算すると
α[2](q[1]-q[2])x[2]=0
そして、q[1]-q[2]≠0, x[2]≠0だから
よって、α[2]=0
以上から、x[1], x[2]は線形独立です。
(証明終わり)
(3) q[1], q[2], ..., q[n]がすべて異なる固有値のとき、それに対応する固有ベクトルx[1], x[2], ..., x[n]は線形独立である。
(証明)
まず、n=1のときは、x[1]≠0だから成り立ちます。
また、n=2のときは、(2)により成り立ちます。
次に、n=kのときに成り立つと仮定します。
q[1], ..., q[k], q[k+1]が線形変換Aのすべて異なる固有値とし、それに対応する固有ベクトルをx[1], ..., x[k], x[k+1]とします。
n=kのとき成り立つから
x[1], ..., x[k]は線形独立です。
ここで、x[1], ..., x[k], x[k+1]が線形従属と仮定すると、(1)により、
x[k+1]=α[1]x[1]+...+α[k]x[k] ………………………(式3-1)
(α[1], ..., α[k]はスカラー)と表わされます。
よって、q[k+1]x[k+1]=Ax[k+1]=α[1]Ax[1]+...+α[n]Ax[n]=α[1]q[1]x[1]+...+α[k]q[k]x[k]
すなわち、
q[k+1]x[k+1]=α[1]q[1]x[1]+...+α[k]q[k]x[k] ……(式3-2)
(式3-1)×q[k+1]-(式3-2)を計算すると
0=(q[k+1]-q[1])α[1]x[1]+...+(q[k+1]-q[k])α[k]x[k]
そして、x[1], ..., x[k]は線形独立だから
(q[k+1]-q[1])α[1]=...=(q[k+1]-q[k])α[k]=0
さらに、q[k+1]-q[1]≠0, ..., q[k+1]-q[k]≠0だから
α[1]=...=α[k]=0
すると、x[k+1]=α[1]x[1]+...+α[k]x[k]=0となってしまい、x[k+1]が固有ベクトルであることと矛盾します。
よって、x[1], ..., x[k], x[k+1]は線形独立です。
したがって、n=k+1のときも成り立ちます。
以上から、任意の自然数nに対して成り立ちます。
(証明終わり)