有機化学の構造決定の自作問題 第8弾です。

有機化学の構造決定の自作問題 第8弾です。 挑戦および感想などいただければ幸いです。 ※一部大学の範囲を含みますが、説明しておりますので、高校生でも解けます。なお、炭素の表記のみ省略しています。 ※本問題の化合物は既報のものであります。 ※設問や解答と関係の無いコメントは御遠慮ください。 【問題】 化合物Aは不斉炭素原子を一つだけ有しており、このうち S-体(光学異性体のうちの左手の分子) は、特有の症状に対して極めて強い薬理作用を有することが知られている。今回、添付の画像に示される化合物Bを出発物質として、化合物Aの合成を試みた。 ここで、以下の添付画像における ① ~ ③ までの特徴的な反応について、まず初めに説明しておく。 ①カルボニル基を有する化合物 R-C(=O)-R´に対して、R´´-MgBrと呼ばれるグリニャール試薬をTHF溶液中で反応させる。この後、酸で処理をすることにより、図のようにアルコールを合成することができる。 ②臭化物イオン Br⁻、パラトルエンスルホン酸イオン (トシラート) OTs⁻ は脱離能が非常に高い陰イオンである。 Br⁻は容易に強塩基である RO⁻ と置換することができ、OTs⁻ は容易に CN⁻ などの別の陰イオンとの置換が起こる。 ③共役ジエンC=C-C=Cに対して、アルケンC=Cを加熱しながら反応させることで、二重結合を一つだけ有する環状化合物を形成することが出来る。これは Diels-Alder 反応と呼ばれる。 以上の①~③の機構を踏まえた上で、以下の合成経路に従って化合物Aを合成した。 (i) THF中でフルオロベンゼンのp-位をMgBrに置換した化合物Cに対して、化合物Bをゆっくりと反応させた後、酸で処理することで不斉炭素原子を有する化合物Dが得られた。 (ii) 化合物Dを穏やかに酸化させることにより、化合物Eを得た。 (iii) 3-ブロモプロパンアミンを調製し、これにヨウ化メチルを 2 等量反応させることで、アミノ基の水素を2つともメチル基に置換した。この化合物にTHF中でMgを反応させることにより、グリニャール試薬Fを生じた。この化合物Fを含むTHF溶液に、化合物Dをゆっくりと反応させた後、酸で処理することで化合物Gを得た。 (iv) この化合物G 0.02 mol に対して、金属ナトリウムを反応させたところ、0.01 mol の気体を発生させながら別の化合物に変化した。これに対し、3-ブロモ-1-プロペンを反応させたところ、化合物Hが得られた。 (v) 化合物Hを加熱することによって、化合物Iに変化した。 (vi) 化合物Iの溶液に酸触媒を添加して加熱することにより、分子内脱水がおこり、化合物Jに変化した。化合物Jでは新たな芳香環を形成していることが確認された。 (vii) 化合物Jに対して、シアン化ナトリウムを反応させたところ、置換生成物として化合物Aが得られた。 【設問】 以下の問いに答えよ。ただし、不斉炭素原子には * をつけて表記するのみで良い。 (1) 化合物Dの構造を示せ。 (2) 化合物Gの構造を示せ。 (3) 化合物Iの構造を示せ。 (4) 化合物Aの構造を示せ。

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ベストアンサー

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解けたと思うので解答します。どうしてもトシル基が略せなかったので書いていますが、ご了承ください。 (1)D:フルオロベンゼンのp位に-MgBrがあるようなグリニャール試薬をBに反応させ、その後酸で処理をしている訳ですからアルデヒド基の部分に結合し、アルコールとなります。つまり以下のような構造になります。 (2)G:N,N-ジメチル-3-ブロモ-1-プロパンアミンを調整してからそれをグリニャール試薬としています。これをDを穏やかに酸化させたEに反応させているので以下に示す構造になります。 (3)I:Gに金属ナトリウムを加え、その後3-ブロモ-1-プロペンを作用させることで化合物Hを得ています。 そして、化合物Hは加熱する事によって化合物Iとなっています。化合物Hは分子内に共役ジエンとジエノフィルを持っているので加熱すればDiels-Alder 反応が起こります。故に、以下に示す構造の様になります。 (4)A:Iを酸触媒下で加熱する事でDiels-Alder反応によって生じた架橋構造を壊し、二つのヒドロキシ基を作ってから分子内脱水によって新たなベンゼン環を形成させています。 さて、ここまで来たら⁻OTsを⁻C≡Nに置換すれば良いです。よって、化合物Aは以下に示す構造になります。

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おお、鮮やかな回答の流れで見事に全て正解されましたね! 意外と簡単でしたかね。個人的にはDiels-Alder辺りで引っかけ問題みたく想定していましたが、そんなことはなかったみたいですね。 この化合物AのS-体は、エスシタロプラムという名前の化合物です。抗うつ薬(精神安定剤)としては、日本でもっとも広く利用されている化合物になります。

ThanksImg質問者からのお礼コメント

非常に流れの良い解答で、今回も大正解でございました!ご回答ありがとうございました。

お礼日時:10/30 22:06

その他の回答(1件)

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問題文としていくつか欠陥があります。 THF パラトルエンスルホン酸イオン トシラート 共役ジエン 脱離能 芳香環 酸で処理 〇等量 の説明が無い。 芳香環という言葉は高校で習ったかどうか微妙。 脱離能は一応画像に説明があるが、それが脱離能の説明なのかが分からない。 等量は知ってる高校生もいるだろうが、多分教科書にない言葉なので説明を。 構造式は略さずに書くべき。 エチル基を-Etのように略す概念は一般的に高校生には無いだろう。 反応式を(1)(2)でまとめずに1段階ずつ矢印書いて丁寧に書くべき。 ディールスアルダーの説明をケクレ構造式で説明しているが、高校生はケクレ構造式を知らないだろう。 一応ベンゼン環の正六角形はケクレ構造式だが、あれをベンゼン環特有の物と思っている人はいるだろう。 ケクレ構造式について高校教科書に説明が無い以上説明は書く必要がある。 全体的にもっと平易な言葉を用いた方が良いと思いますね。 特に「酸で処理」とかどこがどう反応するか分からないと思います。 (2)H3O+が「酸で処理」を意味するのかどうかも分かりません。 そうすればより問題文として完成された物になるでしょう。

なるほど、色々ありがとうございます。確かに等量などの単語は分からないかもしれませんね。 ただ、炭素のケクレ表記については、説明文で補足をしてありますが。