新井平伊(1953年~)博士は、順天堂大学医学部卒、老年精神医学を専門とする精神科医。同大学医学部附属順天堂越谷病院院長代行等を歴任し、同大学大学院医学研究科精神・行動科学名誉教授。脳の健康のために何かやっていますか?肝臓の数値を気にしたり、血圧を毎日測る人がいても、脳の健康状態を意識している人は少ないはずです。脳は身体の中でも最も大切な臓器であるのに。近年、身体の寿命ははどんどんのびているのに、脳の寿命はのびていません。このアンバランスをどうにかしたい、ということで本書は書かれました。
認知症にならないために、脳の寿命を延ばす手法を解説した本。冒頭で脳のメカニズム(老化するしくみ)が解説されて、その後全部で18の脳のメンテナンス法が解説される(内容は脳に効く食べ物・サプリや、脳に有効な睡眠・運動方法などすぐに実行できる手法も多い)。最後に脳の最先端医療の話があったが、脳はまだまだ解明されていない事も多い、謎多いものなのだと再確認。著者の新井氏は順天堂大学名誉教授で、同大医学部でアルツハイマーの治療に専心してきた、脳の専門医です。脳の働きについてはまだ20%ほどしかわかっていないと言います。それほど謎の臓器なのです。本書では、まず、その脳の謎から説き起こし、なぜ、脳が老化するかについて解説します。その後に、本題である「脳の健康寿命」をいかにしてのばすかを詳述していきます。そのためにどうすれば良いのかを、「18の心得」としてまとめました。「お酒はタバコよりも脳に害をなす」とか、「認知症にきく食べ物はない」とか、けっこうショッキングな項目もありますが、ほとんどは普通の事柄です。要は、それを実行できるかどうです。その実践編では、運動はどのようにやれば効果的であったり、睡眠と脳の関係に関しても触れます。ゲーム(トランプ、麻雀、将棋、囲碁)なども脳には良いのですが、「脳トレ」はあまり効果がないそうです。最後に、「脳に良い食事」、「サプリメントは効くのか?」について話して、終わります。当方も90歳に近づき、また、コロナ禍の中でこれまでの生活・活動習慣が(主に収縮の方向に)変化を余儀なくされる中で、書店の新刊台にある本書を見て、思わず手に取った。著者によれば、感染症の克服、血管が関係する病気の治療が進んだこと、がんの治療が進んだことなどによって、体の健康寿命は大幅に伸びた一方で、脳の寿命は必ずしもそれに追いついておらず、厚労省は、高齢者(65歳以上)の認知症患者は、2012年の460万人(同人口の15%)から、2025年には730万人(同20%)になると推計しているという。そして、脳の働きは、いまだ10~20%ほどしか分かっていないとしながらも、最近の研究結果などを踏まえて、「脳寿命を延ばすために、今すぐできる18の方法」として、以下を挙げている。①トランプ、囲碁、将棋、マージャンなどの対人ゲームは、脳の老化防止に効く。②毎日の飲酒は最悪。タバコよりも酒のほうが脳にダイレクトに害をなす。③“脳に効く特効薬”のような食べ物はないと知るべし。④糖尿病は最大の敵。専門医のもとで真っ先に治す。➄歯周病は認知症を促進する。放っておかずに必ず治療する。⑥質が高く良い睡眠は脳の健康に不可欠。➆聴力低下を改善することは脳の活動にとって極めて大事。⑧睡眠時無呼吸症候群は必ずしかるべき処置をする。➈少し汗をかく程度の有酸素運動を週に3回、30分くらいずつ行う。➉運動しながら頭も働かせる。「ながら作業」には一層の効果がある。⑪社会的に孤立しないように、本人も周囲も気をつける。⑫体重は健康の最終指標。適正な体重に近づける。⑬コレステロールと中性脂肪をコントロールする。⑭血圧は高すぎても低すぎてもダメ。なるべく変動させない。⑮脳の老化に早めに気づくために、ちょっとした「変化」を見逃さない。⑯脳の老化の仕組みを、4段階に分けて理解しておく。⑰脳にとっては「意欲」が大事。何事もデュアル、トリプルで楽しむ。⑱サプリメントの効果には結論が出ていない。賢い姿勢はそれに頼らないこと。自ら心当たりがある項目も少なくなく、新年にあたり、ひとつずつ日常に取り入れていきたいと思う次第です。