ビートルズのキャピトル盤のBEATLES`65の日本盤のレコードががないのは何故ですか?発売する意味のないアーリービートルズは出ているのに。
ビートルズのキャピトル盤のBEATLES`65の日本盤のレコードががないのは何故ですか?発売する意味のないアーリービートルズは出ているのに。 これがないとアイフィールファインとシーズアウーマンに深くエコーがかかっているバージョンが聞けないじゃないですか(当時)
ベストアンサー
米キャピトル編集盤の日本盤LPは、「Magical Mystery Tour」と「Hey Jude」が米本国とほぼ同タイミングで発表されたのを除いて、1970年8~9月にまとめて発売されている。 この時期は1970年4月にポールがビートルズ脱退宣言を出し、その後映画「Let It Be」が公開されて、ビートルズ解散が周知の事実となった頃にあたる。このタイミングでなぜ東芝音楽工業(のち東芝EMI)がキャピトル盤の一斉発売に踏み切ったのかは、当時のビートルズ担当の2代目ディレクター水原健二氏(初代は高嶋ちさ子の父君としても知られる髙嶋弘之氏、三代目は石坂敬一氏)に訊かない限り分からない。まだご存命だが、初代高嶋氏や三代目石坂氏(故人)のようには表に出て当時のことを語りたがらない方なので多分無理だろう。 日本でもビートルズの解散は大きく報じられた。日本で本当にビートルズのレコードが「売れた」のは、ビートルズが解散してビートルズが「歴史」になってからだと言われている。解散して改めて注目されたビートルズについて、ここを「売りどき」と見なして日本未発売だった米盤の発売に踏み切ったのだろうか。「国内未発表のアメリカ盤、一斉発売!」と銘打てばそれなりのセールスが挙げられると読んだのだろう。 このときに日本盤発売が見送られ、結局日本盤LPが作られなかったのは、キャピトルではなく米ユナイテッド・アーティスツから発売されていた「A Hard Day's Night」サントラ盤を除くと、お訊ねの「Beatles '65」、および「Rubber Soul」「Revolver」の3枚。 日本盤を発売するかどうかの基準は、どうも収録曲よりは、ジャケットが日本既発盤とカブるかどうかで選ばれていたように思える。 この時点で日本既発盤と同じ(ロゴ等を除いて)ジャケットとなったのは、「The Beatles' Second Album」だけ。このジャケットは日本独自編集盤「ビートルズNo.2!」と同じだ。 米デビュー盤「Meet the Beatles」は、日本編集盤「ビートルズ!」と同じ「ハーフ・シャドウ」の名で知られる有名なモノクロ写真をあしらったジャケットだが、米盤は写真の色が青地、日本盤は黒地だったから区別がついた。なおハーフ・シャドウの写真を最初に使った英オリジナル盤「With the Beatles」は、ビートルズ来日時に日本で「ステレオ!これがビートルズVol.2」のタイトルで発売されていたが、曲順とタイトルが英オリジナル盤とは異なっていた。 あとは米キャピトル盤オリジナルのジャケットのものだけが日本での発売の対象となっている。 「The Beatles' Story」や米盤「Help」はビートルズの演奏とは言えないにしても音源上の特典があったが、「Something New」や「The Early Beatles」(表カヴァーは英『For Sale』の裏ジャケ写真を流用)あたりは当時の日本盤の発売状況を見ても収録曲だけ見れば出す必然性に乏しい。これは「ジャケ買い」狙いかと思わせる。 キャピトル盤「Rubber Soul」「Revolver」を日本で出さなかったのは、収録曲が違うだけで明らかにタイトル・ジャケットとも英・日の既発盤と同じ(米盤『Rubber Soul』は英日盤とはタイトルロゴの色と大きさが違っているが、写真は同じ)だったために混同を避けたものと思われる。マニア的には米盤のみのレア音源があるので面白いんだけど。 「Beatles '65」もカヴァー写真は英・日既発盤の「Beatles for Sale」と同じだし、曲目もシングル盤の2曲(I Feel Fine / She's a Woman)以外は「For Sale」と重複するから、混同回避で発売を見送ったものと推測できる。 「Beatles '65」ステレオ盤に入っている「I Feel Fine」「She's a Woman」のエコーバリバリの疑似ステレオは、当時の米キャピトルの粗っぽい仕事がよく分かる、今となってはそれなりに貴重なドキュメントだけど、否定的に見ればこんなのビートルズの意思など無視した乱暴極まる所業だからねえ。この2曲は日本編集盤「ビートルズNo.5!」(モノラル盤のみ作られた)に収録されていたし、この2曲のために「Beatles '65」を日本で発売する価値は無いと判断されたのではないかしら。 今でこそイギリスのオリジナル・アルバムを軸に聴く、というのがビートルズ入門の王道になっているけど、英オリジナル盤・米編集盤・日本編集盤が入り乱れて一遍に売られていた1970年代前半の日本では、まだそれは「常識」じゃなかったからね。 ビートルズに関する入門書も少なかったし、英オリジナル盤で買い揃えるべし、なんてちゃんと指南している解説書もほとんどなかった。英米日の日本盤レコードがレコード店に等しく並べられていたから、ビギナーはどのアルバムを買えばよいのか本当に判らなかった。 「Help」なんて、米盤にはどの英盤にも入って無さそうな曲が入っていたから買ってみたら、ただのオーケストラによるインスト曲だったし、「The Early Beatles」もジャケットが綺麗だから買ったら、英ファースト・アルバムから3曲抜いた劣化盤だと後になって分かった。 こういう風に買うものを戸惑わせて、余計な買い物をさせるのが目的だったとは思いたくないんだが、今思うと余計なことをしてくれたよね。 解散後に東芝EMIのビートルズ三代目ディレクターとなった石坂敬一氏が、「ビートルズは英オリジナル盤を順に聴くべし」という指針を明確に示してビギナーの入門ガイドとなるビートルズの小冊子を作ってその教えを叩きこんだ。別曲順・別ジャケットだったイギリス最初の2枚のアルバムもオリジナルとまったく同じ体裁に改めて発売し、英オリジナル盤に発売順に①番から遠し番号を作って「英オリジナル盤最優先」の方針を明確にした。米盤や日本盤も一度発売した以上は並行して売られていたが、英盤より大きな通し番号が振られて明らかに「マガイモノ」と分かる売り方がされていた。 石坂氏が1970年代の早い時期に英オリジナル盤を優先的に聴きなさい、と教えてくれたことには、今思うと感謝の念しかない。
大変興味深い情報をありがとうございます。当時のジャケットデザインによる都合とは成る程、納得行きます。アーリービートルズを知らないで買った私は見事それに引っ掛かった訳ですね。
質問者からのお礼コメント
大変勉強になりました。この上なくすばらしい回答でした 回答期間中にuntさんに小生の質問を目にとめてもらって よかったです。
お礼日時:5/22 16:58