乗降客数で言うと、城陽の次の長池もそこそこあるのですが、そこから急激に落ち込みます。沿線の風景も一変します。長池までは都市近郊ですが、山城青谷から急に「近郊農村」の景色に変わります。
私個人の感想としては、長池までは今回の事業区間に入れてもよかったんでないの?と思います。実際検討もされたそうなのですが、費用の点でちょいと想定オーバーだったらしく、削減方法を探った結果、今回は城陽まで、って事に落ち着いたようです。
奈良までの流動がよっぽど太いなら、「農村」の区間を含めて全線複線にする意義もあるかも知れませんが、現実には奈良駅の立地の事もあって、近鉄から都市間の需要を奪うにはいろいろ困難が伴います(コロナ前にはジャパンレールパスを持ってる外国人には大人気でしたけど)。
つまり、「投資はしたが回収出来ない」という危険が大きい区間である、という事です。
さらに、奈良線は線区としては全線が京都府内に存在します。しかし線の南部の複線化は、そのエリアの需要に応えるものではなく、当然奈良直行の速達列車の増加が目的という事になりますので、これまでのような京都府と沿線自治体の「お布施」でやるのはむずかしくなってきます。府や自治体にしてみたら、「オレたちがカネ出してんのに、自分とこは大して便利にならずに通過列車が増えただけじゃないか」って事です。現状、みやこ路快速を待避するのは宇治駅だけですが、全線複線化・快速系増発(場合によって特急も頻発)となれば、当然普通列車は待避回数が増えて来ます。「自分たちが出したカネで奈良が便利になり、自分たちが乗る列車は待たされている」という話になったら、いろいろ問題になりますよね、税金ですから。
じゃあ奈良県がお金を出すのかと言えば、事業は全部京都府域内で完結してしまいますから、多少は出せても多くは期待出来ません。これまた税金ですから難しい。
という事で、これまでのようなお布施頼みの複線化事業ではちょっと難しいエリアに入りつつある、という事じゃないかと思います(これは、京都と三重に跨りながら経済的には奈良の影響が強い関西本線加茂以東に対してどこの府県もカネを出さずに放置してきた、という事情にも通じるものがあります)。
そして、こしあんさんが書いているように、天井川の支障が多い。トンネル部は単線トンネルもう1本掘る?それとも開削して水路橋に変更する? もともと水路橋の部分は架け替える? いずれにしても大工事が待っています。乗客の落ち込む区間、「スポンサー」が明確にしにくい区間にそういう障害も存在するとなると、これはそう簡単な話ではない、という事なわけです。