「面白い」の定義にもよると思いますが、以下は私の好みです。
①一読してニヤリとする表現で、人生や社会を描いた作品。
『吾輩は猫である』『坊ちゃん』
漱石の初期の作品で、余裕派とよばれていました。しかし誰にも通じる善悪が基調となっていますので、漱石が新たに気づいた倫理感はないです。
②若々しさが感じられる半面、本当は暗い小説。
『三四郎』
田舎者の三四郎が東京の華やかさに驚きました。そして広田先生・里見美禰子・与次郎・野々宮達との若々しい交流。最後は美禰子への失恋。
私が学生時代に東京に下宿していた時を、鮮明に思い出してくれます。記憶に残る作品で私も愛読しています。
美禰子のような女性は都会でも多くいただけに、三四郎はまるで私かと誤解するほどでした。
③暗い人生を描いた小説。
『こころ』
悪人は一人も登場しないのに、二人の自殺者。人生の暗さをリアルに表しています。
④我々に宿題を残した小説。
『明暗』
最後に登場した清子は漱石が晩年つぶやいていた「則天去私」を、どのように具現化してくれるでしょうか?
とても興味を抱かしてくれる作品です。