何が最高かは個人の価値による。 （１）遺伝情報の増殖。それが生命体の目的である 病院へ入院して２日目、一男一女の子達が孫を連れて日替わりで見舞いに来てくれた。孫達も結婚している。一番上の孫は曾孫もつれてきた。私の遺伝子は確実に次世代へ受け継がれた。責任は果たした。 入院３日目、死亡確認。 （２）友人こそ人生の喜び。 病院へ入院してはや１週間。毎日日替わりで何人もの友人が見舞いに来て喋って帰っていく。 末期癌患者やのに、こんなに賑やかな病室ってのも珍しいと担当医師や看護師さんも笑っている。 まあ、看護師の目的は私が食べられないお見舞いの”お菓子・ケーキ”払い下げであることは判っている。が、看護師へそれを渡すこともまた楽しい。 入院８日目。面会謝絶。家族と最後の会話。意識混濁。 入院９日目。話のネタが出来た、あの世とやらでも友人を増やそう。家族に見守られて笑って息を引き取った。 （３）やることはやった。 この病室の窓の下、街の景色は凄い奇麗だ。 この町は私が県議会議員を務めたこの３０年で大きく発展し奇麗になった。 私のこの業績は誰も否定できないだろう。 うん、良くやった自分よ。 国会議員になる夢もあった。が、どうせ自分なんか派閥の駒にしかなれない。 そこへいくと、県議会議員という井戸の中ではあるが、自分は県政の大物と言われ、県知事も私の意見は無視しなかった。うん、分相応とはこのことだ。我が人生に悔いはなし。 （４）英雄願望 今度乗る飛行機、凍った川に落ちないかなぁ。 もし落ちたらアーランド・ウィリアムズ・ジュニア のように、救助の綱が来ても他人に譲って俺は英雄として死ぬんだ。 今度乗る夜行バス。高速道路橋桁から落ちそうにならないかなぁ。私が乗客へ適切な指示を出して皆助ける。最後の一人を送り出した直後、バスごと落下して私は英雄として死ぬ。 その為にも、早く元気になって退院せにゃならん。