端的に言えば狙撃手は人殺しだからです。 兵士はみな人殺しではないか？と思われるかもしれませんが･･･人が人を殺すという行為はやはり精神的にクるようで（罪悪感とか恐怖心とか）多大なストレスを受けるものです（ただしまれに殺人のストレスに耐性がある人もいる） 「戦争における人殺しの心理学」からの引用ですが ○第二次大戦中、敵と遭遇したときアメリカ軍の兵士１００人のうち、実際に戦闘したのは僅か2割以下。残りは敵に発砲することさえなく、戦友の救出・伝令・武器弾薬の輸送といった、発砲するよりむしろ危険の大きい仕事を率先して行うようになる。 ○訓練標的と違い、生きて呼吸をしている敵に相対すると、兵士の圧倒的多数が敵の頭上めがけて発砲してしまう。 ○アレクサンダー大王は征服につぐ征服をくり返したが、敵の剣によって失った兵士はわずか７００人だった。 戦争の犠牲者は、戦闘（これ自体は、ほとんど無血の押し合いだった）が終わったあと背中を向けて逃げだしたときに殺された。つまり、白兵戦なるものは存在しない。 ○ 戦闘を経験した直後のイスラエル兵に何が一番恐ろしかったか質問したとき、もっとも多かったのは「ほかの人間を死なせること」であり、これは「自分が死ぬこと」より多かった。 それほど人間は人間を殺すことに強烈な抵抗感が存在することがわかっています。 しかし、狙撃手の仕事はこのような殺人行為を自主的に・積極的に行っていることが最大の違いとなります。 考えてもみてください、かけがえのない友人が・親同然に思っていた上官が・自分を慕ってor可愛がってくれた後輩や先輩が、顎を吹き飛ばされ、腹を打ち抜かれてどす黒い血を流しながらもだえ苦しんで涙を流しながら死んでいく様を目の当たりにしたとき、そのような鬼畜にももとる行為を「積極的に」行っていた元凶を目の前にして、条約や規律ではこう決まっているからといわれて果たしてそれを許せるのかどうか？ まあほとんどの人は･･･無理だと思います。 国際条約？人道的配慮？関係ありません・そんなものは理想論でしかありません。戦争犯罪かもしれませんが、狙撃手を拷問の末殺害したことが戦争犯罪として立件された事例を私は知りません（まあ味方からも忌み嫌われていますから仕方ないのかも） そういった事情もあって投降もしくは拘束された狙撃手は、まさに一切の容赦なく取り扱われています。 武器を捨てて投降してきたドイツ軍狙撃手を、イギリス軍の士官が至近距離から拳銃で射殺した例やそのまま絞首刑にされた例。 これでもまだ慈悲のあるほうで、ソ連軍に捕まった場合はさらに悲惨で、文字通り生きたまま全身を切り刻まれた例や、生きたままはらわたを引きずり出されるなどの悲惨な運命をたどった例は枚挙に暇がありません。 もっとも捕虜として後送された例はごく僅かにあるようです。 投入され死亡した狙撃手の数からすればそんな例は皆無に等しいですが･･･ 興味（と覚悟）があれば東部戦線を生き抜いた狙撃手のインタビューをまとめた本「最強の狙撃手」を読んでみることをお勧めします。