北大の地震研究者の
なぜ私は逮捕されたのか
島村英紀
地震計横領疑惑と逮捕拘留と冤罪主 張
2005年3月、ノルウェーのベルゲン大学に北 大所有の海底地震計を売却したとの業務上横 領の容疑で北海道大学から告訴される。
しこの告訴を受理した札幌地検は業務上横領 では立件するには無理と判断し、2006年2月1 日、詐欺罪で島村を逮捕し起訴、171日間拘 留した。
札幌地裁での裁判では詐欺罪の被害者とされ たノルウェー・ベルゲン大学の研究者が詐欺 の被害を受けたとは思っていないと証言した ほか、海底地震計はそもそも北海道大学の備 品にもなっておらず、島村が独自に世界に先 駆けて開発したもので北海道大学の所有物で はないと主張したほか、実際には売買は行わ れていないと主張した。
された海底地震計が北大に残っていて、ベル ゲン大学はなにも言ってきていなかった。つ まりベルゲン大学が支払ったお金は「共同研 究費」だった。ただベルゲン大学が、ノル ウェーの石油会社からの研究予算獲得のため に形式上「買った」形にしたかったのであっ た。本当はベルゲン大学の事情であった。さ らに、入金した金は、検察がいくら調べて も、私用に使った形跡はなく、すべて研究費 に使われていた [17] 。これらのため、北海道大 学が告訴して札幌地検が受理した罪名は「業 務上横領」だったが、途中から「詐欺」に変 わったのは業務上横領では立件できないとい う検察の見通しゆえであった [18] 。このほか、 たとえ材料や原料は北海道大学の研究費で 買ったとしても、それを使って開発した、世 界になかった海底地震計は北海道大学のもの ではなくて研究者のものだという議論もあ る [19] 。
しかし2007年1月12日札幌地裁で懲役3年、執 行猶予4年の判決が出た。2007年刊行の著作 『私はなぜ逮捕され、そこで何を見たか。』 で、地震予知に対して批判的であったため国 策で起訴された冤罪だ [20] と主張している。島 村はこのような国策逮捕・国策起訴では控訴 しても無駄だと控訴を断念し、2011年1月に 執行猶予が終った。島村はこのほか、執行猶 予期間中に4冊、合計5冊の本を出した。
この間、島村は北海道大学から2200万円の損 害賠償を求められ、民事で提訴されてい る [21] 。北海道大学の訴えの内容は、島村が大 学の備品の海底地震計をノルウェーの大学に 売却し、代金約2000万円を島村の口座に振り 込ませたというものであった [21] 。2006年10 月25日に和解が成立し、同年11月1日に島村 が1850万円を支払うことで決着がつい た [21] 。この問題について、島村側は「振り込 まれた研究費を自分の口座に入れたこと」は 「大学に相談したが、大学では外国から研究 費を受けとる仕組みがなかった」と主張して いる [21] 。