これは格闘技というより人を殺す技術あるいは技だと思われます。通常は武器としては使われないようなものを武器として用います。つまり、武器がない＝素手（厳密には素手ではないが、素手に近い）ということで裸という言葉を当てたのではないでしょうか。直接関係あるかどうか分かりませんが、以前NHK中部の放送の中で福井県在住の松下電器の社員の方が忍術を体得されていてその一つとしてティッシュで作った紙縒りを振り下ろして割り箸を折るという技を披露していました。また秘伝に従って雑草を使ってあるものを作ってその成分を分析したら青酸ガスを発生したらしいです。その他にも色々な技を持っているようでした。トレベニアンが日本文化に造詣が深いところからこのような知識を有していたとしても不思議ではないと思います。その他池上遼一氏の三十年ほど前の「男大空」という作品にも紙テープを使って相手を殺すと言う裸殺そのものと考えられるようなシーンがありました。また、スティーブン・セガール主演のグリマーマンの中ではカッターの刃を仕込んだクレジットカードで敵を倒すシーンがあり、これなどはシブミの中にクレジットカードでニコライにやられたという一節があり、その影響をもろに受けていると言えるでしょう。もちろんこれではもはや裸殺とは呼べませんが。子供の頃に万国ビックリショーと言う番組に出てきた忍者の末裔という人は片方の掌に載せたトランプを親指だけで目にも留まらぬ速さでシャッフルすると言う凄い技術を見せつけ子供心に感心したことを思い出しました。伊賀のようにショー化されていない本物の忍者は恐らくこのようなことが可能であると思われます。この辺りの知識を用いてトレベニアン流にアレンジしたものではないでしょうか。それにしてもニコライが鉛筆を使って心の師を殺めるシーンは何度読んでも涙が流れます。同じ著者の「バスク真夏の死」も素晴らしい作品です。